五行歌集
連作 死について
死刑の
宣告に
耳を塞いで
生に
耽っている
オオクロアリが死に
ニジュウヤホシテントウが死に
ハクセキレイが死に
ムジナが死に
ニンゲンが死んでゆく
祖父が死に祖母が死に
もうひと組の祖父が死に祖母が死に
叔父たちが死に叔母たちが死に
父が死んだ
やがてわたしが死ぬ
死んで当然の奴が死に
死んでほしくなかった人が死に
たくさんの人に囲まれた男が死に
ひとりぼっちの女が死んだ
死んだあとは皆おなじだった
理由なく
たくさんの人が死に
理由なく
私たちが生き残っている
偶然の生存者たち
そんなふうに
それでも
いのちの火は
かろうじて
うけつがれてきた
億兆の銀河の中で
遙かな時の中で
生きて死んだ
無数の命たち
わたしの仲間たち
なにもできないわたしは
ちいさな
ことばだけ
のこして
去ろうと想う