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伊野はや子
伊野はや子
novelistID. 35938
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エラー

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エラー


 恋とはときに重苦しい依存へ、そして度が過ぎるとただの執着へと変化していく。おそらくそこに当初あった恋心はすでになく、一向に振り向いてくれない相手や、それになおまだ恋する自分へ陶酔する、自己満足の世界に生きているのだ。そしてそれにサヨナラを告げるのは、とても労力のいる大仕事だ。

 わたしが恋をし、最終的に執着してしまった哀れな相手は知り合った当時12歳だった。中学一年生のときクラスメイトになり、その年の五月にはわたしはすでに恋に落ちていた。この恋は紆余曲折を経たところで、中学校3年間のうちに終わることはなかった。中学生の恋愛といえば、付き合っては別れ、別れてはくっつき、というように、短期間の付き合いというものが主流だったが、わたしはその恋が実らなかったおかげで、高校を卒業するまで未練がましく引きずっていく結果になってしまった。

 高校にも入れば新しい出会いもあり、彼への恋も冷めるだろうと高をくくっていたが、そうたやすいものではなかった。4年間のあいだにわたしは何人かの男性とデートする機会を得ていた。そのうちの何人かとは、付き合えるんじゃないかというくらいまで発展したこともある。忘れるために、わざわざ友達に紹介をしてもらったことだってある。だけどそれらは全部、わたしがこの手で台無しにしてしまった。

 どういう経由だったか忘れたが、わたしはある日彼の携帯番号とアドレスを教えてもらえたのだ。わたしは3か月に1度くらいの頻度で彼にメールを出した。他愛のない会話を唐突に初めて、勝手に自分で盛り上がったのだ。高校は別々だったが1年に1度くらい駅で偶然会ったり、バレンタインの日にチョコを渡すという理由で会ってもらったりもした。そのたびにこっぴどく振られていたのだがわたしはそれでも諦めることができなかった。この時点でわたしはもう恋をしていたのではなく、彼に執着していたのだと思う。わたしはとっくに好きではなくなっていたくせに、どうにかして好きになってもらうことが目的となっていたのだから、身勝手な話である。

 大学に入り、彼氏ができてもなお、彼への執着は続いていた。だがある日、わたしが留学している最中にことは起きたのだ。いつものように数か月ぶりにメールをしたときのことだ。メールがエラーになって帰ってきたのである。呆気なさすぎる終了宣告だった。7年間も友人でいられたなら、これから先も切れることはないだろうと勝手に安心していたわたしがいたもので、その日はひどく落ち込んだ。不本意な別れに、怒りのような、悲しみのようなやりきれない気持ちがこみ上げてくるのだ。けれど心の隅には現実を受け止め、納得しようとする成長したわたしもいた。7年間の集大成がエラーメールとなった。わたしの執着心への、当然の報いなのだろう。わたしが7年かけても打てなかった終止符を彼はようやく打ってくれた。むしろ感謝するべきなのだ。
作品名:エラー 作家名:伊野はや子