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ボクは…ダレ?

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陽射しがカーテン越しに揺らめいている。
外では、まだ冷えた風が葉のない木々の間を鬼ごっこしているようにすり抜けていく。
暖かな陽射しが、硝子にくっついてボクの様子を眺めているようだ。
キミも いっしょに遊びたい?
ボクの体が キミの光で光ってるよ。ボクもキミのように輝いて見えるかなぁ。
あ、しぃー。あの音は、ママのスリッパの音。
少し、ママと遊んでくるね。じゃあ、またあとでね。
     
     *          *          *          

ボクは、自分の部屋(ホームベース)から抜け出し、ママとの遊びを始めた。
やっぱり今日もママが、かくれんぼのおにです。
でも、ママは、ボクと遊んでるっていうより 見つけたがっているみたい。
「あらーまた居ない……ねえ何処に居るのー」
(くすくす。ママがボクを探してるよ)
ママは、ボクの部屋の前で 仁王立ちして 辺りを見回している。
「もう、気がつくと 居ないんだから、ほんとに気ままね。まあそれもいいけど」
今朝も ママとのかくれんぼを楽しみながら ボクは、お部屋の探検に出かける。

いつも同じ経路を通っているのに、ママはあちらこちらを見回してボクを探している。
さっきなんて、ボクが居る部屋を覗いたのに通り過ぎていちゃった。
そっか、その時、ボクはソファーの下を潜っていたんだね。
その前は、カーテンの陰にいたのかもしれない。
「どこかな?」
あ、またママの足音が近づいてくる。(さてどうしようかな)
ボクは、ゆっくりっと壁際にくっついて声を潜めながら移動する。
(あらら、テレビゲーム機出しっぱなしだよ)
ママの子どものミツル君の部屋だ。
ミツル君の宝物は、ボクには邪魔っけだけど、蹴飛ばすわけにはいかない。

このテレビゲームの機械を片付けるように テレビの下台にスペースが空いている。
ミツル君はママとお片付けの約束していたのに、きのうの夜は 眠たいってそのままお布団に入っちゃった。朝も急がしいったら、起きたら そのまま部屋を出て行っちゃったみたいだ。

(ボクには触れないから、そーっと横を通り過ぎよう)
ミツル君の部屋の真ん中に敷いてあるラグを横切り、ボクは探検を続けた。
探検?あれ、ママとのかくれんぼだったかな。
ボクは、その部屋の中をひと回りすると、手は振らないけれど、廊下に出た。
うん、これで此処もおしまいと満足した その時だった。
(ありゃりゃ、ママのスリッパが目の前に……)
ボクは、そぉーっとママを見上げ、踵なんてないけどそっぽ向いて逃げ出そうとした。
「あ、やっと見つけた。ほらパパのカッターシャツのボタン食べちゃったでしょ」
(そういえば、クローゼットの辺りでカラカラって変なもの飲んじゃったっけ)
ママは、ボクの体を捕まえると「はい、見せて……」とぼくの真ん中のボタンを押した。
ほやほやっとボクは、力が抜けていくようだ。
ママは、ボクのお尻にあるダストボックスを引き出して、面倒な紙パックにしまわず ぽいぽいと拾った宝物を新聞紙の上に広げた。
(くすぐったいよ、ママ。でもみんなみんなボクの宝物だよ。いっぱい貯まったら教えてあげているでしょ。キャハハハ、くすぐったいよ。笑って噴出しちゃったでしょ!)
ママは、ワンタッチ、ひと目でそれを見つけちゃった。
「ほらあった」
ママは、ボクの宝物からパパのカッターシャツの半透明のボタンを摘み上げた。
(あーあ。でも仕方ないや。パパのお腹で はち切れたんでしょ。直さないとね)

でも、ボクは、なんでもかんでも 集めてるわけじゃないんだよ。
少し前、パパのポケットから落ちたまぁるい銀色の100ってやつも、ミツル君の部屋に転がっていた海のようなガラス玉もボクはそっとそのままにしておいたんだ。
パパのものは、ママが見つけて あらぁってにこにこ拾っていったし、ミツル君だって机の引き出しに大切にしまっていた。ボクだって、みんなの宝物まで 持ってこないよ。

「そろそろ捨てないとね。それにしても 我が家って何処からこんなに出てくるのかしら」
ママは、そういうとボクの宝物を新聞紙に包んで捨てちゃった。
(あーあ、今回はちょっと早かったなぁ。くしゃくしゃぽい!)
ボクは、軽くなったお腹で、元気も減ってきたから また自分の場所に戻ることにした。

ボクは、自分の部屋(ホームベース)に戻ると、静かに部屋を思い浮かべて過ごした。
(結構、今回は面白い宝探しだったな。今度は何があるか楽しみだ)
ボクは、空っぽになった宝入れに 今 夢を詰め込んでいるのかもしれない。
今は行けない所も、集められなかった宝物も、速さだって進化したいなって思ってる。
さてと、ゆっくりと お腹いっぱいにデンキを貯えて、次の探検に備えるぞ。

(おや?向こうの部屋でママの子どものミツル君が何か零したみたい。
宝物?ボクの出動か!)
ボクの好奇心が沸き立ち、部屋を出ようとした。
だが……。
(ママー、リビングのドア閉めたらボク行けないよー)
ちょっぴり寂しいボクだった。


ボクは、径30センチ程の円盤型の自動お掃除ロボット(…らしい。ショボーン)
体重は4キログラムくらいかな(えへへ。いっぱいハイテクノロジー仕様です)


     ― 了 ―
作品名:ボクは…ダレ? 作家名:甜茶