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本当にあったゾッとする話3 -リアシート-

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さて、本題に入ろう。

学生時代、アルバイトで貯めた金で、安い中古車を買って乗り回していた。
スポーツタイプの2ドアクーペで、当時は暴走族御用達の車種だったため、深夜の国道などで良くヤンキーにちょっかいを出された。

ある日、その車で彼女と富士五湖方面にドライブに行った。
終日楽しく遊び、帰りは夜遅くなった。
金は無いが時間はたっぷりあるので、中央高速道路ではなく、一般道で帰ることにした。
それにこの時間だったら、一般道でもそれほど時間はかからない。
カーステレオで音楽を流し、彼女と二人で話しながら運転していた。
深夜であり道路も空いていて、自分以外の車を見ることがほとんど無かった。
とある信号で停止し、信号が青に変わって走り出したときのことだ。
今まで陽気に話していた彼女が急に黙りこんでしまった。
運転しながら彼女の様子を窺うと、顔がこわばっている。
「どうしたの。気分でも悪くなった?」
私が心配して尋ねると、彼女から意外な返事が返って来た。
「ねえ、後ろに誰かいない?」
私は反射的にバックミラーを見た。
誰も写っていない。
私は運転しながら素早く首を後ろに回し、リアシートを振り向いたが、やはり誰もいない。
「誰もいないよ。どうしたの。」
彼女は緊張した声で話す。
「さっきの信号待ちのとき、走り出す寸前に誰かリアシートに乗り込んで来たの。」
「だって、この車2ドアだぜ。助手席に人が座った状態でリアシートに乗り込めるわけないよ。」
「わたしにもわからないよ。とにかく誰か座ってるの。」
「自分で振り向いて後ろを見てみたら?」
「だめっ!!」
「どうして?」
「怖くて振り向けない。」
私は彼女の気のせいだと断定した。
しかし、あまり強く言うのも悪いと思ったので、カーステレオの音楽をサザンやエア・サプライなど、のりの良い音楽に変え、私から努めて明るく話しかけるようにした。
しかし、彼女は体を固くしたまま、返事もどこか上の空で、緊張を解くことはなかった。
やがて彼女の自宅に着くと、彼女は心底ほっとした様子で、そそくさと車を降りると、さよなら、楽しかったわ、またね、と言い置いて、さっさと家に入ってしまった。
いつもなら、車を降りてからぐるりとボンネットを回って運転席まで来るのに。
そして、私は運転席のウィンドウを全開して、軽くさよならのキスをするのに。
私は少し拍子抜けしたが、(こんなこともあるさと)気を取り直し、クラッチを切ってギアをローに入れようとした。
その時だ。
リアシートから、ため息が聞こえた。
ぎょっとした私はリアシートを振り返った。
しかし、そこには誰もいなかった。
私は自分の聞き間違いだと思った。
何か別の音が、ため息のように聞こえたのだと。
彼女の家から私の自宅まで、車で10分ほどの距離だったが、その間、私はバックミラーが気になって仕方がなかった。
信号待ちで停車するたびに、リアシートを振り返っていた。
自宅の駐車場に無事到着したときは、先ほどの彼女ではないが、本当に安心した。

リアシートになにかがいたとしたら、そいつは彼女に自分の存在を気付かれたことが分かっていたのではないか。
だから、そいつも彼女に対して緊張していたのではないか。
彼女が車から降りたとき、そいつもきっと、ほっとして安堵のため息が漏れたのだろう。

などということは、当時の私も今の私も、考えもしない。
ただの勘違いなのだ。