足跡(4/7編集)
桔梗の実家がある地域は、冬の間はずっと雪に覆われている。
一度だけ、つかないはずの場所に人間の足跡がついていたことがある。
「そこは、降ったばかりの新雪の上なんだけど……え、降ったばかりで子どもとかがつけたんだろうって? うう、大抵はそうなんだけどぉー……そうじゃなくて」
何しろそこは凍った池の上。
池が凍り、五メートルくらい積もった雪の上に、さらに積もったところだった。
「ね、おかしいでしょ」
そんなところわざわざ歩く人なんていないはずだ。
仮に歩いたら足がずぶずぶ埋まってしまい、下手をすれば氷が割れて溺れる。
だから、どんな小さい子だって歩けるはずがない。
「しかもその足跡おかしいの、」
片足ぶん、一つしか残っていなかったのだから……。
双眼鏡で覗くと、爪先が行き止りの方角に向いていた。それは桔梗の部屋から見えた。
家の、二階から。