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無音の接続詩

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 そう言って、ニイーッと今日一番の満面の笑みを浮かべると、反転翻って右の通路へ走り出す。
「じゃあね~また明日」
 言いながら手を振る姿が、通路を走りぬけ階段を降り、闇の中を4号棟の方に消えていった。
 私はその場にへたり込み呟いた。
「…キス、されるかと思った」
 今夜の主役の月は消えて、主役を奪われた月だけが残った。
ただ光をもたらすだけになったその月は、月乃さんには適わないまでも、やはり綺麗だなと思った。

 ただ、その時には私は月乃さんの言葉の意味を良く解っていなかった。私が無意識に漏らした言葉が、その言葉通りではない特別な意味を含んでいる言葉だと言うことを知るのは、もう少し後の事だった。



BGM
4分33秒/ジョン・ケージ
作品名:無音の接続詩 作家名:雨泉洋悠