アメリカ漂流記~極寒の地より
刺身が食べたくて、どうしようもなくなってきたある日、工事屋のおっちゃんが、
冷凍されたマグロを買ってきて自然解凍し、食べたところ、中トロでおいしかった
という情報を入手しました。
そのマグロは加熱調理用のマグロなのですが、冷凍技術が進歩している最近では、
生でも食べれるのでしょう。
もちろん、この国には生食の習慣はありませんから、加熱調理用ということで販売しているのだと思います。
仕事が終わったあと、急いでその店に行きました。
すると、なんと日本人が群がっているではありませんか!
みんな、お刺身食いたかったのね。それにしても情報伝達の早いこと!
私たちが行ったときには既に、売り切れていました。
魚屋のおじさんに、いつ入荷するか聞いたら、明日入るということだったので、
次の日、喜び勇んで買いに行きました。
ありました!
愛しの中トロちゃんが。
買いだめをしようということになって、我々だけで10パック買いました。
1パック500グラムのブロックです。
魚屋のおじさんが言いました。
「最近、マグロが日本人に良く売れるんだが、みんなマグロ好きなんだね。
どうやって食べてるの?」
私は答えました。
「え? どうやってって、そりゃあそのまま食べてますけど。」
おじさんは目を丸くして袋の調理法を指差しながらこう言いました。
「君達、これを良く読みたまえ。食べ方間違ってるから!
いいかい、これは焼いて食べるの。わかる? 焼いて食べるんだよ。
生で食べる食べ物ではないの。言ってること分かるよね?」
まるで、子供に諭す様に言いました。
(いやいや、知ってるし・・・。)
舌の確かな工事屋のおっちゃんたちが、食えるといえば絶対に食える事は、
この辺に住む日本人の常識です。
この業界で、工事屋といえば、食のエキスパートです。
我々以上に世界中を駆け巡り、その土地で長く生活をする、国際出稼ぎ集団なのです。
そんな工事屋が食えると言えば、例えそれがウ○コでも食います。
こんな逸話がある程です。
中国のとある所で滞在中、ある料理屋で出る料理の1つにとんでもないものが
あったそうです。
お皿の上に、茶色にとぐろを巻く練り物で、表面にはところどころにトウモロコシが
くっついており、それはどこから見てもウ○コの様な食べ物だったそうです。
おまけに匂いもそれに近い匂いで、最初は皆、食べなかったそうですが、工事屋が
「食える」という裁定を下し、その料理は日本人に人気No1の料理になったそうです。
魚屋さんには、
「はいはい、分かりましたよ。」
と、適当にあしらって帰りました。
その日の夕食に並んだ、中トロの美味しかったこと!!
みんなご飯をおかわりして、明日の昼用のご飯がなくなる程でした。
作品名:アメリカ漂流記~極寒の地より 作家名:ohmysky