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茶房 クロッカス 番外編

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『茶房 クロッカス』
 ここで働き始めて、どれくらいになるかしら?
 外からドアを見て、ふとそんなことを思った。

 最初は薫から紹介されてこの店に来て、薫が辞めると言うからその後釜でアルバイトに雇ってもらって、そして不思議な縁でお母さんとマスターが恋人同士だったことが分かり、二人の結婚と同時に私も良くんと結婚して、早6年。
 結婚して一年目にはルイが生まれて……。
 早いものだわ。
 今ではもう幼稚園に行くようになり、エプロンを欲しがるから買ってやれば、誰に言われたわけでもないのに幼稚園から帰って来るとそれを付けて店に出るようになって……。ふふふっ。
 もうすっかりお店のマスコットだもんね♪

 ルイがお店に出て、お客さんが来る度に「いらっしゃいませ〜」と可愛い声で言うと、初めて来たお客さんは一瞬だけ驚いた顔をするけど、すぐにニッコリ笑って嬉しそうに、「まあ可愛いウエィトレスさんね!」そう言ってくれる人がほとんどだ。
 お客さんのそんな声を聞くとお義父さんも嬉しそうだし、この子は本当に素直な優しい良い子で、みんなに幸せを振り撒いてくれる。
 最近つくづく良くんと結婚して良かったなぁと思える。こんな可愛い娘を授かることもできて。

 お母さんも、お義父さんと結婚してから少し顔が丸くなった。
 和やかにもなったけど、それ以上にきっと体重も増えてるんだろうな。
 俗に言う幸せ太りってやつかも知れない。うふっ。
 私も人のことは言えないか……。

 あっ、もう少ししたら良くんが仕事が終わって迎えに来てくれる時間だわ。
 彼は結婚当初とまったく変わらず、今も私を大切にしてくれるし、ルイのことも可愛がってくれている。私って、本当に幸せだわ。
 そう思いながらドアを開けて中に入った。

「ルイ、そろそろパパが迎えに来る時間よ。さあ、帰る準備をしましょう」
「はぁ〜い、ママ」 
 ルイが早くもエプロンを外し始めた。