トランスレイター
ハサン六世を見送った後、烏丸が三立に聞いた。
「なあに、今回の出費は我が社の太陽熱パネルを世界中に知らしめる為の広告費だと思えばよい。日菱の思い通りにさせてなるものか」
三立は歯を見せて笑った。
「それより、ありがとう烏丸君! 君のお陰で金額が分かって、日菱のやつらを出し抜く事が出来たよ! 流石、一流の通訳者(トランスレイター)だ。ボーナスは弾ませてもらうよ!」
「ありがとうございます」
烏丸は一礼すると、振り返り、三立の本社から出て行った。
そして、地下駐車場に停めてあったレクサスに乗り込むと、烏丸は携帯電話をスーツの胸ポケットから取り出し、ボタンを押した。
「はい」
「烏丸です」
「……どうだった?」
「決まりました。入札金額は九千五百億円です」
「フッ! ハハハ! そうか、九千五百億か! これで、三立は五百億もの赤字事業を請け負った事になる訳だ」
「三立さんは広告費だと言っていましたよ」
「ハハハ! 五百億の広告費か……、笑わせる……。ありがとう、烏丸君! これで、暫く三立は身動きが出来なくなる。我々の狙い通りだよ。流石、一流の通訳者(トランスレイター)だ。ボーナスは弾ませてもらうよ!」
「ありがとうございます、日菱さん」
烏丸は携帯を胸ポケットに入れると、レクサスのエンジンを入れ、地下駐車場から出て行った。
完