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トルコ行進曲

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住んでいるホテルからの散歩ルートを後輩と歩いていると、近所の子供たちが集まってきて、ちょっかいを掛けてきます。
「ハロー、ハロー」
といっては、逃げて行き、中には後ろからちょっと背中を突っついては逃げていきます。

(あー、この子達にとって、我々は外国人なんだろうなぁ、まぁテンションあがっちゃって。)
そう考えながらほほえましく見ていました。

向こうから、子供の一団がやってきます。
私の顔を見るなり、子供たちは私を指差して「ジョニー、ジョニー」と叫び、握手を求めてきました。
海外出張に行くと、なぜだか子供になつかれる私です。
慣れたもんですが、今回はちょっと様子が違いました。

いつもは、「チャイニーズ」とか「アチョー」とか言われる場合が多いのですが、今回は「ジョニー」です。
何故か欧米人になった気分でうれしくなりました。

私は田舎者で、子供の頃、家族同然でお付き合いのあった方の姪がアメリカ人と国際結婚をし、その子供(女の子)が私の住む田舎町に遊びに来ていました。
その時の、栗色の長い髪の毛と青い目に憧れ、彼女とコミュニケーションをとりたいと子供心に英語を教えてもらったりしていました。それが私が長く継続して英語を好きなまま、学んできた起源となっています。
そんな私なので、欧米人にはある種の憧れとコンプレックスを持っていました。

そんな私に、「ジョニー」と呼びかけ、握手をしてくる子供たちにとても気を良くしていました。

「先輩、誰かトルコの有名人に似ているんじゃやいんですかね。」
と後輩がさらに追い討ちを掛けるものですから、
「そ、そうかなぁ」
天にも上る気持ちです。

その子たちは、しきりに私の手を引っ張り、どこかへ案内しようとします。
(なんだろう?)
私と後輩は、子供たちに促されるまま、ついて行きました。

しばらく歩き、ある建物の前に着きました。
そこは、映画館の様です。まぁ、映画館といっても田舎の映画館ですから、都会にある大きなシネコンプレックス
の様な洒落た建物ではなく、どちらかというと公民館の様な建物です。
そこに、映画の看板が色々掛かっているので、かろうじて映画館と判断できる程度です。

(ああ、この町にも映画館があったんだ。)

感心しながら見ていると、子供達がしきりにひとつのポスターを指差しています。

(ん?)

近寄って、よく見ると何処かで見たことがある俳優が映っています。
Mr.ビーンに主演しているイギリスの名優 ローワン・アトキンソンがお得意のおとぼけ顔で写真に納まっています。

(おっ、ここでもMr.ビーンをやっているんだ。)
これなら、私も楽しめるから見ようかな? などと考えていると、後ろで後輩が

「ククククク」
と笑いをこらえていました。

「ん? どうした?」
聞くと、彼は、

「はーっはっはっは! 先輩、これ見てくださいよ。」
とそのポスターの題名を指差しました。

そこには、

「Jony English (ジョニー イングリッシュ)」と書かれていました。

そうです。子供達の言う「ジョニー」とは「Mr.ビーン」の事だったのです!

「俺はそんなにアホ面か?」

「せっ、先輩、そっ、それは俺に聞かないで下さい。しゃれになってませんよ〜、ひーっひっひ、は、はら痛い」

(お、お前、地獄に落ちろ!)(-_-メ)

忘れたくても忘れられない出来事でした。
因みに、私の名誉のために言っておきますが、私は彼とはぜんぜん似ておりません。本当です!!

その日は、トルコアイス、「ドゥンドゥルマー」を焼け食いし、腹を壊しました。
作品名:トルコ行進曲 作家名:ohmysky