甘い紅茶
いつからそうだったか思い出してみるが物心付いたときからわりと上手に生きて来れず、良い所でタイミングを自分から手放してきたことを悔やんでも悔やみきれない。
それでもその選択が当時は自分にとって最善の処置だったのは間違いない。
少女は、ティースプーンで紅茶を混ぜる。
いつもより多めにミルクを入れたことで少し濃いクリーム色に変化を遂げた紅茶にはたっぷりの砂糖が溶け込んでいて、とても甘い。甘い、紅茶。
エラーばっかりの、人生だ、と少女はため息をついて混ぜる手を止めて、その手を膝の上に置き少し波打つ紅茶の表面を見詰めて考える。世界がもっと穏やかであれば幸せになれたのだろうか。そもそも自分にとって最大の幸せとは、何なんだろうか。考えれば考えるほど理想が湧き上がりそれに追いつかない現実で陰湿な空気が少女の夢を覆い隠す。
足りないのは、何なんだろうか。
心の中に何かがつっかえている。みんなこのつっかえを抱えながら生きているのだろうか。
この世界がじぶんの幸せを、行く末をだめにしている様でならない。助けて、と大声で叫んでしまえたらどれだけいいか、幸せになりたい、と涙してしまえたらきっと何か変わるのかもしれない。だけど、何かを脱線してしまう世界に恐怖して結局この悪循環な毎日を今日も明日も明後日も過ごすのだろう。
脳味噌が可哀想だけど、悲鳴を上げる。
だから今日もまた彼女は世界に嘆きながら甘い紅茶を飲むことになる。