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涙の新宿御苑

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涙の新宿御苑



今、こうして一人でプラタナスの並木道を歩いていると、わたしの頭の中はアナタのことでいっぱいになってしまう。高校時代にアナタが戯れに抱きしめてくれた時のあの感触が忘れられない。だって、あの頃から好きだったのだから。

アナタにとってわたしは数あるトモダチの一人に過ぎなかったのでしょう。わたしは、ずっと気持ちを隠していたからね。たったひと言「逢いたい」と今は言えるのに、「あの時のように抱きしめて欲しい、いやもっと激しく抱き寄せて欲しい」とも心の中では言っているのに。

今ここにアナタがいて、この強い想いを伝えたとしたらアナタはどんな顔するのでしょうね。

まるで、ヨーロッパのどこかの公園のように、樹の下にいくつもベンチがある。ああ、ここでアナタと二人で寄り添い、肩に頬を押し当て未来のことを話したいのに。私はベンチを見ながら溜息をつく。

この素晴らしい風景も、生き生きとした緑の葉もアナタが居なければ紫色。あら、やだわ、紫色の景色だなんて、そぐわない。可笑しい……笑おうとおもっても、いつの間にか涙が出てきて、鼻の奥のほうで少し甘く感じる。流れるのにまかせた涙が地面に落ちて、吸い込まれ消えて行く。


アナタを想うこの気持ちはいつまで続くのでしょう。違う誰かを好きになれば、忘れてしまうのかしら。でもアナタとずっと一緒にいたい。アナタが欲しい気持ちは変わらない気がする。もし、生まれ変わって、また同じ気持ちになっても、またその次に生まれ変わったならば望みが叶う気がするの。

逢いたくて触れたくて我慢できないのに、アナタには言えないでいるの。
この強すぎる想いを伝えることが出来たとしても、アナタはきっと……

……退いてしまうでしょうから。

作品名:涙の新宿御苑 作家名:伊達梁川