小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ウエツグ上次
ウエツグ上次
novelistID. 33611
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

蛇口

INDEX|1ページ/1ページ|

 
蛇口がある。
私の家にももちろんある。蛇のような長細い管の先に口が付いている。というよりも口が本体である。
 あれら口の仕事はモノを流し出すことだ。多くの家に色々な口があるだろう。昔からある水を流す蛇口は、当然どこの家にもある。 
普段あまり使わない蛇口もあるが、蛇口はあればあるだけ便利だ。

 
 なかでも私がよく使っているのは飲み蛇口と聴き蛇口だ。言うまでもないが、使っている飲み蛇口はオレンジジュースだ。聴き蛇口は色々な曲を入れている。蛇口には何曲も入るので大変便利である。
あまり珍しい蛇口を使ったことがないが、愚蛇口というものもあるらしい。人の愚痴が流れてくるそうだ。愚痴を聞くのが好きな人が使うのであろうか。愚痴の愚痴を言うのであろうか。
 蛇口の仕組みは、専門知識のない私には難しくて理解ができないが、そんなものを理解しなくても使えるということだけで十分だ。
 
 そして、もう一つ私が好んで使っている蛇口がある。口蛇口である。 私は噂が好きなのだ。噂は何故か魅かれる。話が嘘であろうが真であろうが噂は聞きたくなるものである。
私は夜中、ひっそり蛇口の口に耳を当て、こそこそ話す口蛇口の流す噂を聴く。
 どこの誰が流した噂か分からないが、噂は聞いただけで満足するものだ。 蛇口の用途は沢山あるが、愚痴や噂の様に人の話が流れる蛇口の需要が多いようだ。まぁ、分からなくはない。話というのは好みもあるが面白いものだ。
そういえば、家にある蛇口の中で使えない蛇口がある。空蛇口という名前で、必ず取り付けなければならないらしくどの家にも取り付けられている。この蛇口の口は閉じられていて用途はよく分からない。流れ出てきた噂によると緊急時に使うものらしい。

 蛇口には耳がない。蛇口なので当然ではあるが、口があってそこから話が流れるものがあるのに耳がないというのは些か妙である。その話はどこから訊いたのか気になるのだ。話声はいつも違う人物の誰かが話す声なのである。機械音でないので誰かの話のはずなのである。
 そんなことを考えていると、ふと、空蛇口が目に入る。もしかしたらこれは謎の解決する話が聞ける蛇口なのではないだろうか。あまり簡単に解決しては面白くないから口を固く閉ざしているのかもしれない。 
私は今まで気にしたことのなかったこの蛇口が無性に気になった。気になって堪らなかった。


私は閉ざれた口に手を伸ばした。 
しかし、口は意外にも簡単に開いた。

蛇口の口に耳を当てるが何も聞こえない。
蛇口は何も流さない。

私は口の中を覗き込んだ。



蛇口はすっぽりと私を飲み込んでしまった。





あぁ、
今この話はどんな蛇口から流れているのであろうか。
作品名:蛇口 作家名:ウエツグ上次