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脱線する脳みそ

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変わったことが好きである。私はとにかく、珍しいものとか変なものに惹かれるタチで、何か人がやっていないことをやりたがる癖がある。
 今日は雨が降っている。そこで挑戦してみたのはこれだ。
 雨が降ると人は傘を差す。パラパラと色とりどりの傘が街の中に広がっていく。でもその傘はみな大体同じで柄や多少の作りは違っていても、「これは」という特別なものはない。そこで私は「これは!」という代物を作ってみた。
 取り出すものは、まず日傘である。私は普段日傘を使わないので、母の物を拝借した。で、どうすると思います? こうするんです。
 うちでは炒めものなんかを作る時の油は霧吹きの容器に入れてフライパンに吹きかけている。その方が節約できるからだ。
 それを! バッと開いた日傘に吹きかける! もういっちょ! 吹きかける! そおれ、シュッ! シュッ! シュシュシュシュシュ!
 日傘は見る見るうちに油を吸い込んでゆく。おお、この吸収性。メンドインどこ産かは分からないが、この点は高く評価したい。
 ほら、テレビの料理番組で先生が言いますね。「まんべんなく塩を振りかけてください」って。私は料理を作る時、ちゃんとまんべんなく塩を振りかけている。それが今、役に立っている! 素晴らしい! 料理が出来るって素晴らしい!
 で、出来上がりました。世界に一本しかない手作りの『油日傘』が。さあ、これでさっそく出かけてみましょう。外はざあざあ本降りだ。いざ、試さん!我がオリジナル兵器の能力を!
 玄関を出ます。そして傘を開く。すると!
 おおおお。弾く弾く! 油が雨を弾いてゆく~! 嬉しいですね~。感動ですね~。こんなに雨傘みたいになるとは! 私は散歩がてらに隣街まで歩いていきました。歩いていく、はずでした。異変が起こったのは歩き出してから、ものの十分ほど経った頃でした。
 臭い。私は思いました。なんか変な匂いがする。なんか良くない匂いがする。なんだこの匂い。どこから漂って来てんだ? 上を見上げました。
「これか――――!」
 私は傘を放り投げました。
「臭い傘って聞いたことないんだよ! 雨弾くだけでいいんだよ! 匂ってどうすんだよ!」
 私は道に転がった傘に罵声を浴びせました。傘はなおも雨を弾き続け油臭を漂わせます。
 私は思いました。その辺に子犬とか捨てられてたら、これ差してあげよう。もういらないし、リサイクルにもなるし。すると、少し前に傘を差さずに歩いているおばあさんが!
「おばあさん、この傘差しなよ! 風邪ひくよ!」
 おばあさんは、ありがとうと言って素直に受け取ってくれました。すると、こうぽつりと呟きました。
「若い頃のおじいさんの匂いがする……」
 あ、そうなんだと思い、思わず突っ立っていると、おばあさんは目を潤ませました。
「うっ、うっ、若い頃のおじいさんの、おえっ。匂いが、おえっ」
「おばあさん、悪かった悪かった。これ、おじいさんじゃないから」
 傘を取り上げ、私は走り去りました。
 雨が降ってる時は雨傘を差そう。こんな当たり前のことに気づかせてくれるオリジナル傘って素敵。私やっぱり、間違ってました!
作品名:脱線する脳みそ 作家名:ひまわり