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The El Andile Vision 第4章 Ep. 1

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 曲がりくねって、あちらこちらに湾曲し、時々、彼らは再び元の道に戻ったのではないかと錯覚しそうになるほどであった。
 確かに地図がないと、あっという間に迷ってしまい、悪くすればどの入り口にもたどり着けず、一生ぐるぐるとまわっていなければならないかもしれなかった。
 そのようにして、どれくらい進み続けたことか……。
 突然、前方に微かな灯りが見えた気がして、レトウは緊張した。
 素早く彼は手燭を消した。
「……どうした、レトウ」
 イサスが鋭くレトウに問いかける。
 それには答えず、しばらくの間じっと前方に目を凝らした後、レトウは不意に肩の力を抜いた。
「……いや、すまねえ。――向こうに、灯りが見えたような気がしたんだが……どうも、勘違いだったようだ」
 しかしそのとき、イサスの胸に何か不快な感覚が過ぎていった。
 彼はレトウの前に出た。
「おい、イサ!おまえ、一体何を……?」
 驚いて押しとどめようとするレトウを振り切って、彼は闇の空間を進んでいった。
 何かに誘われるかのように――
 闇の向こうに、微かに淡い光が閃いた。
 イサスにはそれが、はっきりと見えた。
 その幽鬼のような妖しい光。
 直感で、彼にはそれが何か忌まわしい力の源であることがわかった。
 彼の全身に忽ち緊張が走った。
「やめろ、イサ!勝手に進むんじゃねえ。迷っちまったらどうする!」
 レトウが後ろから強い口調で叫ぶと、イサスは足を止め、振り返った。
 レトウの様子を見て、少し驚いたような表情を浮かべる。
「……レトウ……おまえには、見えないのか。あの、光が……」
「光……?」
 レトウは再び前方に目を凝らしたが、イサスのいうような光らしきものは全く見えない。
 先程ちらりと見えたかと思ったものも、気のせいだったかと思えるほど、前にはただ茫漠とした濃い闇が広がるばかりである。
「……俺には、何も見えないが……」
 レトウは言うと、不審そうにイサスを見返した。
 闇の中でも、相手が異様に緊張した様子であることが見てとれた。
 そのただならぬ気配につられて、レトウもごくりと唾を飲み込む。
「まさか……おまえには――何か、見えるとでもいうのか?」
 その瞬間、イサスは奇妙な感覚が己の中を駆け巡るのを強く感じ、思わずレトウに警戒の目を向けた。
「――そこから下がれ、レトウ!」
 イサスは叫んだ。
 その激しい命令の語調は、紛れもなく『黒い狼』の首領イサス・ライヴァーの持つものだった。
 レトウはその勢いに思わずひるんだが、反射的に命令に従い、数歩後退った。
 そんな彼を置いて、イサスは単身、前に向き直った。
 その警戒心に満ちた瞳が闇の中で異彩を放つ。
 ――来る……!
 その『何か』が、明らかに人の領域を越えた、魔性を帯びたものであるということは、感覚でわかった。
 それまでに彼の周りで起こった様々な出来事……あの不思議な経験の数々が、それとはっきり認知できるだけの勘を彼の内部に刷り込んでいたのだ。
 また、或いはそれも彼の中で目覚め始めている、『あの力』のゆえであろうか。
(おまえは、誰だ……!)
 イサスが、対する未知の敵に向かって誰何したとき、その『謎の力』はまさにぴたりと彼の体を捉えた。
 一瞬、目の前で光が弾けた。
 あっ、と思った瞬間、息ができなくなった。
 それだけ強い力が彼の喉を押さえ、呼吸を止めていた。
 体全体に衝撃が通り抜けていく。
「イサ――!」
 後ろで、レトウが叫ぶ声が聞こえたが、それも次第に微かになっていった。
 そのときには彼を掴んだその力は、既に彼の体を異なる空間へと引きずり込んでいたのだ。