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ツカノアラシ@万恒河沙
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novelistID. 1469
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たんていきたん

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神田川は、カルシウム剤を何錠か水と共に飲み込む。だからと言って神経が簡単に休まることはない。それにしても、いつも思うのだが『殺しても死なない』という言葉は何か矛盾していないか。
「良く気がつきましたね、警部。そうです、問題はこの話にあったのです。結論を言いましょう。そう、一話目では名探偵と被害者はいましたが、犯人がいませんでした。そして二話目では、名探偵と犯人がいましたが被害者がいませんでした。それでは、第三話目であるこれはどうでしょうか。名探偵と被害者はすでに出揃っています。結論を言いましょう。今回の話には犯人が存在していないんですよ。はい、証明終わり」
玲はセリフの締めくくりに、手に持った白い扇を効果的に音を立てて閉めてみせる。神田川の顔に表れるはなんとも言えない不可思議な表情。犯人がいないのに他殺屍体が存在している空間。他殺屍体はいったいどのようにして殺されたのか。そして、犯人がいないのにどうして他殺屍体なのか。誰も解らない。永遠の謎。
「犯人がいないのに、屍体があるって話はないだろ」
神田川は断固として抗議をした。彼にしては珍しく、毅然とした態度だった。確かに、それこそが常識と言うものである。
「そこが、不条理たる所以です」
玲かはっきりと言い切る。有無を言わせない調子。そして、玲は舞台の中央までくると、くるりと一回転をして優雅で気取ったお辞儀をした。(周囲が暗くなり、スポットライトがあてられた)そして、玲は執事と共に手に手を取って舞台の袖に姿を消したのだった。
後に残されたのは、事情が全くと言って飲み込めない神田川のみ。神田川は舞台の真ん中で、ただただ呆然と立ち尽くしていた。(暗闇の中に、スポットライトがあてられた神田川一生が浮かび上がる)そう、立ち尽くすしかなかった。
そして、一人だけ残った。
(屍体がいっぱい)
「ちょっと待て、舞台だと?わっ、なぜ、どうして、どこからともなく幕が降りてくるんだ。それに、どうしていつの間にか屋敷が書き割りのセットになっているんだ。その上、なんで目の前に観客がいるんだ。誰か、お願いだから、五百字以上百字以内で理由を明日までに書いてくれっ」
そして、困惑している神田川の悲痛そのものの悲鳴で幕が閉じたのだった。

(暗転)
Cast
神田川一生
聖玲
性悪執事
名探偵
中川大介
自称サムーペキンポー
江川蘭子
藤井則夫
ニセ神田川一生
山田太郎
山田家家政婦
夢幻ホテル支配人
夢幻ホテル従業員
鬼首鬼太郎
鬼首邸執事
友情出演
犯人のみなさん
特別出演
屍体のみなさん
以上順不同敬称略