小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

掲げた掌、ピアッサー。

INDEX|1ページ/1ページ|

 
 お付き合いし始めるとそう感じることが多々あるのだけど、未だかつて誰も私にマーキングしてくれたことはない。

 キスマークなんてすぐ消えてしまうものじゃだめだ。もっともっと強靱で、形として残り、私の体の中に沈み込むようなものが良い。

 印が欲しくて、生きてきて21年、まだピアスを開けたことがない。この人ならと思うその人にマーキングをしてもらう為に、耳は真っ白なままだ。傷一つ付けたことがない。

「お願いします、どうぞ」

 恭しく掲げた未開封のピアッサーを、まだ手にしてくれる人はいない。今の彼も、そうだ。人は口々にこう呟く。

 そんな怖いこと、出来ない。
 そんな重いこと、出来ない。
 ごめんね。

 わかってる、そうだね、重いよね。

 そう、微笑み返すしか出来ない。強要することではないし、この行為はただ単に私の自己満足でしかないだろうし、自慰でしかないのだろうから。

 それでも私は所有されたい。
 自分のものなんだと、示されたい。

 肩を並べて二人でピアスを選びたい。

 これがいいだろうと差し出されたものを、私は嬉々として、その耳に刺すだろう。深く深く食い込ませて、肌を貫通させるだろう。

 誰かの所有物でありたい。

 この形でしか満足しきれないのは、おかしいだろうか。重苦しい愛の方が安心する。

「どうぞ、お願いします」

 この人ならと決めた人に、今日も願い続ける。
 この手に恭しく、ピアッサーを掲げて。

 マーキング、してください。