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ふざけんなぁ!! 9(続いてます)

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歌を忘れたカナリアは? 4



災害は忘れた頃にやってくるというが、その日の新羅の運勢はダントツでどん底だっただろう。


「何でお前だけ白いタキシード着ちゃって、人外の化け物なんかと華燭の典を挙げてるんだよ!? 俺にも今すぐ、白スク水着姿の生な帝人ちゃんを寄越せ!!」


臨也に掛け布団を毟り取られ、無理やり叩き起こされた上、突きつけられたスマホ画面には、セルティのホームページ…【平和島静雄を幸せにする会】が開かれていて。
ワンピースのルフィに扮した静雄が、目張り入りだけど白スクール水着の帝人ちゃんをお膝抱っこし「あーん♪」と焼き鳥で餌付けしている微笑ましい写真が、でかでかと綺麗にUPされていた。

正に、臨也にとっての地雷。
逃げ場が何処にも無さ気な雲行きに、新羅の意識がますます遠くなる。
(ああ、そういえばまだ昨夜の話だったね。あの、皆で馬鹿騒ぎしたコスプレカラオケ大会は)

「愛しい人の花嫁衣裳……、その想い出も今の私には一年ぐらい遠く懐かしい過去に思えるよ……。でも臨也、君、どうして私の寝室にいるのかな? セルティは?」
「今頃首都高ぶっ飛ばしてるんじゃない? 勿論交機の白バイを大量に引き連れてさ」

この男は。
また嫌がらせな依頼で、取り締まりの網の中に、景気良く放り込みやがったか。
怯えて震えながら帰ってくるだろう哀れな恋人を思うと、ますますこいつが憎たらしい。

「セルティが捕まる羽目になったら、私は君との縁を一生切るからね。で、もう一度聞くけど、君はどうやって私の家に入ったんだ? しっかりものの彼女が、玄関の鍵を掛け忘れる訳がないんだけど?」
「そんな些事、どうでもいいだろ? それより 何この静ちゃんのいやらしいニヤケ顔。俺の大事な玩具に不埒な真似しやがって、畜生!! 死ね死ね死ね死ね!!」

ふてぶてしい黒猫は、不満たらたら鼻を鳴らしやがる。
これ程判りやすい行動に走っているというのに、本人は無自覚のまま、あの少女に恋しているなんて気づいていない。
全く、何て難儀な男なのか。
心も捻じ曲がっているが、恋慕の捩れ具合も半端ない。

「もし私の家の合鍵を勝手にこしらえていたら、直ぐに置いて帰ってくれ。そして君の依頼は一ヶ月お断りだ」
「安心しろ。ベランダ側の窓が開いていた」

新羅はガックリ肩を落とす。

「いくらパルクールの名手でも、ここは12階なんだけど」
「静ちゃんとの戦争に比べたら、楽勝だよ」
「この非常識人間どもめ」
「そんな事より、どうしてカラオケ、俺だけハブなんだよぉ?」 

(情報屋の癖に、己を知らないのか!!)

「君ねぇ、まず自身の日頃の行いを反省したらどうだい? 帝人ちゃんが主催する楽しい集まりに、未遂とはいえ強姦魔なんて、お呼びがかかる訳ないだろう? そんな幼児でも理解できるようなトロくさい話を、わざわざ私に言わせないでくれ」
「何時の話だよそれ? その件はもう片付いている。俺達は仲直りしたんだ!!」
「随分と自分に都合の良い妄想だね。じゃ、お休み。」

もう付き合っていられない。
臨也から掛け布団を引っ手繰ると、もぞもぞと魅惑のベッドに潜り込む。
心地よい夢の世界に旅立とうとしたまさにその時、再び無粋なお邪魔虫が新羅の幸せを剥ぎ取りやがった。

「何するんだ? 往診の時間まで寝かせてよ!!」
「お前それでも俺の唯一無二の親友?」
「うわっ、そんな恐ろしい冗談は金輪際止めてくれ。私までセルティに嫌われるじゃないか!!」
「はっ、恋人の『首』の在り処を知ってる癖に、何食わぬ顔のまま知らぬ存ぜぬで、同居生活を送ってる分際がよく言う」
「いいんだ。セルティは私と一緒に暮らすのが一番幸せなんだ」
「彼女の見解が、お前と同一とは限らないだろ? 俺が一言リークすれば、……あ~♪ どうなるかねぇ~♪♪」 
「臨也ぁぁぁぁ!!」
「それが嫌なら……とっとと起きろよ。ねぇ♪」

赤い目をきらきら輝かせつつ、黒いファーコート姿の情報屋は、にんまり口の端を歪めて笑った。
明け方まで、静雄に『幽の命に何かあったらぶっ殺す』というプレッシャーをかけられまくっての治療で、肉体よりも精神に多大な疲労を負わされたというのに、今度はこの困ったチャンのお守りなんて。
酷すぎる。一体自分が何をしたって言うのだ?

「とりあえず、ホームページのスク水の帝人ちゃん以下、彼女のコスプレ写真はデーターごと俺に寄越してね♪ それからこういうのは人目に触れるのは良くない。全部削除して、それから……」
ぴるぴると、怪しげな呼び出し音がファーコートのポケットから響いてくる。
邪魔が入った彼は、渋々と折り畳み式な黒携帯を取り出すと、不貞腐れながら耳に当てた。

「はい、折原です。…………はい……、はい……」
暫く耳を傾けていた彼の眉間に、段々と立て皺がくっきり深く掘り込まれる。

「……報酬は30万ドルで。はい………、口座は何時もの所で……」
やがて、ポケットから別の赤い携帯を引っ張り出して待つ。
三分後、ピロピロと可愛い機械音が鳴ったかと思うと、彼は携帯を開き、受信したメールを覗き込んだ。

「はい、間違い無く頂きました。ではお話します。……羽島幽平の居所は、実家です」
「おい臨也!!」
慌てて阻止すべく飛び掛ったが、あっさり足払いをかけられてフローリングの床に横倒しで転がった。
肩を強く打ちつけた痛みに、手の平をあて呻いている間に、淡々と臨也の電話は終わってしまった。

「何考えているんだ、君は!! 静雄は兎も角、帝人ちゃんが困るじゃないか!! あそこは今、マスコミが大量にカメラ持って張り込んでいるんだぞ!!」
「やだなぁ、新羅。俺は情報屋だよ? ちょっと断れない筋からの依頼だったんだ」 
「嘘つけ!! 騒ぎを大きくして帝人ちゃんを住めないように追い込んで、静雄から引き離すのが目的だろう?」
「あははははは♪ まさか。この俺がそんな簡単な方法を取ってやると思う? あんまり見縊らないで欲しいよね。やるんだったら徹底的に、あのマンション一つ程度、丸ごと燃やすよ♪」

目を眇め、にぃぃぃぃと口の端も歪め、ギラギラした眼差しで新羅を射る。
「そういう使い捨ての操り人形、俺、沢山持っているからねぇ」

臨也には、十代の狂信的な『信者』が沢山いる。
勿論火付けは、静雄宅に限った事でなく………、この家だっていつでも放火できるのだという脅しも含まれているから、質が悪い。

「俺達は永遠に、持ちつ持たれつの親友だよね♪」 
「あ~くぅぅぅまぁぁぁぁ!!」


新羅は恨めしい呻き声を一つ零して身を起こすと、ベッドの端に腰を降ろしてがくりと肩を落とした。