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異性にフェロモンを感じる時。
男性は、女性の顔、胸元、唇、髪、ヒップライン、足‐‐‐どちらかと言うと視覚的なものが多いと聞いた。
そう言われてみれば、だから、女性向けファッションビジネスは廃れないのだろう。
元々、女は、男の視線を意識してしまう本能があるのだから。

では、女の私にとってはどうだろう?

そんな事を、友達に聞いてみた。
‐‐‐やっぱり顔よね‐‐‐
‐‐‐ファッション含めた全体のスタイルが一番!‐‐‐
‐‐‐腕時計している手首に目が行っちゃう‐‐‐
やっぱり、視覚的なものが多いみたいだ。

でも、私にとって一番なのは、男性の声。
見かけは‐‐‐まあ、普通に清潔で、醜く崩れた体型でなければ、あまり気にならない。
年齢も、子供や老人でなければ、別に構わない。
但し、声に関しては、かなりこだわりがある私。
少し、低音。
少し、掠れ気味。
あまりお喋りじゃない話し方。

こんな声に出会うと、私は興奮する。

メール全盛の時代なのに、電話越しに聞きたくなってしまう。
特に、夜中。
「‐‐‐おやすみ‐‐‐」
その一言だけでも言って欲しい夜もある。

今、私にはそんな相手が3人いる。
一人は、50代のお医者様、Kさん。私のかかりつけの先生だ。
もう一人は、40代の会社員、Sさん。私が勤めるクラブの常連のお客様。
最後は、30代の社長、Tさん。私の友達のご主人。

いずれも、夜中に電話出来る相手ではない。
みんな奥様がいらっしゃる。
唯一、単身赴任のSさんは、夜中にメールを送っても、迷惑がらずに返事はくれるが、さすがに電話をかける勇気はない。

でも、無性に、「‐‐‐おやすみ‐‐‐」を聞いて眠りたい夜がある。

そこで、この前、Sさんにアフターをねだった。
歌の上手いSさんが連れて行ってくれた店は、平尾近くのライブバー。
プロの演奏で、好きな洋楽が歌える、博多では有名な店。
ロックが好きなSさんは、Bon Joviを熱唱。
‐‐‐掠れ声のシャウト‐‐‐
聞いているだけで、身体が熱くなる。

そこで、私に名案が浮かんだ!


午前3時。

タクシーに手を上げようとするSさんにねだった。
「‐‐‐ねえ、ハグして、おやすみって言って‐‐‐」
少し首を傾げながらも、Sさんは笑顔で私の身体を軽く抱き。
「‐‐‐おやすみ‐‐‐またね‐‐‐」
と言ってくれた。

タクシーに乗り込み、手を振るSさんを見送った後、私は携帯を取り出した。

耳を近付けると、
「‐‐‐おやすみ‐‐‐またね‐‐‐」

Sさんの声が聞こえた。

作戦成功!
録音機能のお陰で、今日からはぐっすりと眠れそうだ‐‐‐。
作品名: 作家名:RSNA