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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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 雪の日だというのに、「美雪」という名前の女性と別れてしまった。
 彼女が別れを切り出し、僕はそのまま従った。未練がましい男と思われたくなかった。
 素敵だった女性と、雪の美しい日にわかれたという事実。
 「でもそれは仕方ないというほかなかった・だってそのままつきあい続けることはおそらく不可能だろうから」

 そんな彼女が結婚したという話も聞いた。写真も見たが、お相手は知らない男だ。誰だよあんた、と思うが、その男に出会ったのはあくまで彼女のつながりの中なんだから、仕方ないか、と思うしかなかった。自分の友人だったらかえって気まずい結果になったかもしれない、と思うと諦めも突いた。だけど、その男が本当に彼女に会う男なのかは不安だった。

 そして彼女は、雪の美しい日に思い出すほか、僕の心のなかでは消えた存在となっていて、僕は僕で別の人間と付き合って結婚して、そうやって漫然と過ごしていた。
 ある日、ふとコンビニに寄った日に、缶コーヒーをついでに買うかと思いたち、店の隅に行くと、男が午後の紅茶ミルクティーを籠に入れていた。
 あの男か?
 うん、あの男だ。
 いや、あの男だよな?
 あの男なはずだ。

 僕の妻と一緒にいるのは、美雪の旦那であった。

 「あら、あなたもコンビニに来てたの?」
 妻が話しかけてくるのだから、不倫ではないのだろう。まあ不倫されてしまうほどには自分に自身がないわけではないのだが。
 「山下くん、この人は私の旦那。あなた、この人は、大学時代のゼミ仲間の山下くんよ」
 「ああ、どうも、はじめまして」
 はじめましてか、会ってはいないものな、と思いながら、
 「はじめまして」
 と答えた。

 #

 そしてコンビニつながりで彼とは話すようになった。
 奥さんの話をしてくる。紛れも無く美雪の話である。良妻賢母らしい。そうなっているんだろうなあ、とは思うが、彼が自慢しているわけではないのに、なんとなく辛い気分になった。
 美雪にああだこうだ、という訳ではなく、今の妻とは付き合いをしていたそうだという話も聞いて、この人はそれで美雪を選んで、という話が、山下という男の成功譚に聞こえたからである。

 「山下くんのことどう思う?」
 「ああ、良い人なんじゃないか?」
 「そう、やっぱり?」
 「…」
 「どうしたの?」
 「…なんというか、俺よりすごい人だな、と思ってしまって」
 「あら、そんなことを考えちゃったの」
 「実際に話してみてそう思った」
 僕は妻とは違う大学だけどだいたい同じ位のレベルである。彼もそうなのだろう。
 だが、そこには学歴では云々できないなにかがある、と感じた。
 少なくとも彼に自分は勝ち目はないな、と思われた。

 「そういうことを言わないでほしいな」

 妻に言われて、僕は今の気持ちはわかってほしくないな、と思った。彼女に会うのも今となっては嫌だった。思い出として話せそうにない。
 妻にはコンプレックスがあるな、と感じてしまった。
 山下に振られたのは自分が劣っているせいで、僕と結婚できたのは僕がそれを受け入れたからだ、と思い込んでいるということがその一言でわかってしまった。
 妻が逆の立場だったら、妻は妻で辛くなるはずだ。今自分はとても辛いのだから。

 だのに。

 きらめく雪が降る中、逆は起こる。
作品名: 作家名:フレンドボーイ42