おぶりがぁど!~ブラジル滞在日記
社命を受け、いざブラジルへ出発する事と相成りました。
日本で製作した、工場設備を自動的に動かすためのコンピュータシステムの調整のための出張です。
警察で無犯罪証明書を取得し、ビザを受給し、準備万端です。
部下の小林くんと成田空港で合流し、いざ出発です。
契約先から「インバーター」という機械を持ってきてくれと頼まれ、ハンドキャリーする事になりました。
私はこの「インバーター」という機械が何なのか、どの様に使われるものなのかなど一切知りませんでした。
メーカーから貰ったこの機械を見てみると、何やらとっても危険な香りがしました。
見るからに時限爆弾の様な形をしていたのです。
濃い緑色の弁当箱の様な形の箱の中央に4桁のカウンター(赤い色の数字がでる電光掲示板のちっちゃいやつ)とその下には、「Danger」(危険)と書かれた黄色に黒字のステッカーが貼られています。
「これって、持って行って大丈夫なんですか?」
とメーカーの担当者に聞くと、
「前にも持っていって問題なかったので大丈夫ですよ。もし何か言われたらこれを見せてください。」
と、Invoiceと書かれた書類を渡されました。
(まぁ、実績あるなら大丈夫か。)
と、軽い気持ちで引き受け、成田からロサンゼルス経由でサンパウロに到着し、入国審査したところで・・・
捕まりました!!
係官「これは何だ?」
私「インバーターです」
係官「インバーターって何だ?」
私「知りません。」
別室へ連れて行かれ、パンツの1枚までひっくり返されて、調べられました。
私「これは、おたくの国の工場で使うものですよ。」
係官「そんなことは、問題ではない。」
日本語で書かれた取り扱い説明書を見てため息を付くのでした。
別の係官もやって来て、何やら相談しています。
小林くん「僕達、どうなるんですか? どうなるんですか?」
私「・・・知らん」
しばらくして、偉そうな係官登場。
偉そうな係官「これは電気製品かね?」
私「たぶんそうだと思います。」
偉そうな係官「これは何の目的で使う物なのかね?」
私「私も知らないんです。頼まれたんです。お宅の国の国営工場に。」
(そうだ、何か言われたら出せといわれた書類があったっけ!!)
急いでInvoiceと書かれた紙をその係官に見せました。
しかし、係官はふっと笑い首を横に振ってその紙切れを机の上にポンと投げました。
パソコンに何やらパチパチと打ち込んでから、こちらに視線を移し、こういいました。
偉そうな係官「最高関税を掛けます。○○○○レアル支払いなさい。それとも所有権を放棄しますか?」
○○○○レアルって・・・日本円にしたら19万じゃないか!!
私「そ、そんなお金持っていません。」
偉そうな係官「サンパウロに友達はいるかね?」
そんなの、いるわけ無いじゃん! 泣きそうになりました。
私「小林くん、いくら持ってる?」
小林くん「当面の生活費、9万くらいあります。」
私がその時、10万くらい持っていたので、ギリギリ間に合いそうだ。
お金をかき集めて差し出すと。
偉そうな係官「日本円ではダメです。レアルでください。」
私「そんなぁ、入国前なので両替してませんよ。」
また、係官がごそごそと相談を始めました。
そして、
係官「近くの両替所まで連れて行くので、そこで両替してください」
やった! 開放される!
左右を係官に挟まれ、手錠こそ掛けられませんでしたが、まるで犯人護送のような状態で両替所まで連れて行かれました。
無事、19万円をレアルに換金し、支払い証明書を貰って、入国を果たしました。
現場の工場は、サンパウロから、ベロホリゾンチ行きの飛行機に乗り換え、そこから車で3時間半程行ったイパチンガという所にあるのですが、既にベロホリゾンチ行きの飛行機に乗り遅れていました。
急いで空港のカウンターへ行き、理由を説明して他の航空会社のベロホリゾンチ行きの飛行機に必死で走って飛び乗った次第です。
そのローカル線の飛行機の中で、座席の上にスピードくじが置いてあり、削ると当たっていたので、スッチーに渡すと、お酒のセットをくれました。ラッキー!
これは後に事件を引き起こすことになります。
ベロホリゾンチ到着後、ずーっと待っていてくれた現地エージェントの車に乗って、片側が崖になっている未舗装の道路を猛スピードでかっ飛んで滞在先のホテルというか、山小屋というか、そんな所にたどり着いたのです。
車に乗っている時、ふと崖の下をみると、車が数台落ちていて、燃えたのか、黒く焦げているのが見えました。
ゾーっとして、椅子にしがみ付いていました。
到着後、小林くんは
「しょんべんちびりそうになりました!」
と顔面蒼白で言っておりました。
10年後の現在では、広い高速道路が整備されて、快適に現地到着できるそうです。
総移動時間33時間、機内食を連続6回食べて、命からがらたどり着いたのです。
それから、妻にメールを書いて、事の顛末を説明しましたが、そのメールが紛失してしまってありません。
以下は2回目からのメールになります。
(現地入りしてから数日が経過しています。)
幸一@ブラジルです。
昼間はメールが繋がらないので、午前中のみメールしてます。
パソコンは二人で共有しているので、なかなかメールする
時間がないのです。
前のメールで言った、例の19万円は契約先に払ってもらっていますので、ご心配なく。
また、VISAカードが使えますので、生活費補充は大丈夫です。
土曜日は、二人でセントロという繁華街(ショッピング)に、バスに乗っていきました。
バスは50円くらいで乗れますが、1時間に1本ぐらいしかきません。
セントロでは、小林くんがカメラを買いました。
使い捨てカメラは売っていませんが、普通のカメラが、2000円
位で買えます。
買ってから、空けてみたら、電池が腐っていたので、文句を言って取り替えてもらえました。
店員は、ノンテンプロブレーメ(問題ない)と笑っていましたが、
何が、問題ないだこのやろう!!と思ってしまいました。
昼は、そこのホンコンという名前の中華料理屋で食事をしましたが、
冷たいお茶と頼んだのに、あっついお茶がきて、文句を言ったら、
氷を入れてくれました。ノンテンプロブレーメ・・・・・
二人しかいないのに、山盛りで持ってきやがって、3000円も
とられました。ふざけんなこの!!って感じです。
こちらは、車が非常に安いです。2〜30万円で新車が買えます。
お土産に買って帰ろうかしら?
ただし、ポロシャツは非常に高く、6千円くらいします。
日本とは価値感覚が違います。
マンションは4LDKを購入するのに80万円くらい(?)です。
日本では、毎年マンションを買っているようなものだと言ったら
ブラジル人は驚いていました。
お土産屋には、子供用のかわいい服が結構売っているので、
帰りに買って帰ろうと思っています。
国際電話をかけようと思い、言われたとおりに電話しましたが、
掛かりません。へんな国・・・
ホテルの周りには、何もなく、結構暇です。
こちらは、魚料理はとても生臭くてまずいです。
作品名:おぶりがぁど!~ブラジル滞在日記 作家名:ohmysky