2メートルの彼女
2mの彼女
初夏の日差しが頭に降りかかる。爽やかな風がさあーっと吹いた。それと一緒に「あ、気持ちいい」と彼女の声が風と一緒に少し熱くなっていた僕の頭をやさしく撫でて行った。
好きになった彼女、今や僕には大きな存在だ。だが気になることがある。僕は聞いておかなければならないだろうと思い、おそるおそる聞いてみた。
「真奈実さん、僕と一緒に歩くの嫌い?」
真奈実は、一瞬僕が何を言いだしたのかと訝りの表情を浮かべ、すぐにハッと気がついたように、1メートル50センチぐらいになった。
「あ、ははは、何よそんなことないよう」
真奈実はさらに1メートルぐらいになった。
「2メートルはあったよ」
僕は少しすねたように言った。
「つい、癖がついているんだわ。前の彼とずうっとそうだったから」
少し自嘲気味に真奈実が言うのを、僕は少し寂しい気持ちで聞いた。
こんな気持ちになるなんて……。
僕は50センチになった。
また風が吹いて、真奈実の髪が揺れた。ボタンの花のような匂いが僕の脳を刺激して、僕はたまらなくなって立ち止まった。
真奈実も立ち止まり僕を見ている。
真奈実が20センチになる。
僕は5センチになる。
真奈実が0センチになった。
マイナス0.5センチ。
柔らかい。
(了)