かいなに擁かれて 第七章
しかし、二人が知りあうきっかけを自分が作ったという思いが少なからずあったのであろう。納屋には雅代を始め伊原木や田沼のように魅華を支えたいと願う人間が居るのだ。
諸井はそれをよく知っているからこそ、ここの敷居が高かったのだ。
雅代はそのことを誰よりも良く知っている。(それなのに、諸井さんがどうして?)と思った時だった。諸井の後ろに、のれんの向こうに男の姿のあることに気付いた。
「女将さん、随分とご無沙汰しています」
のれんを分け、男が挨拶した。
「徳寿さん……」雅代は思わず声を出した。
その声に、信と正平は仁王立ちとなった。
しかし彼らが仁王立ちになる前に既に魅華と徳寿の視線は宙で交わっていた。
次章へ続く
作品名:かいなに擁かれて 第七章 作家名:ヒロ