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ぽんぽんゆっくりん
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novelistID. 35009
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スナイパーの日常は憂鬱だ

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『序曲』

2016年8月23日 7:45
アシュリー・マシューズ曹長
アメリカ特殊武装偵察部隊 スパロウ
ブラジル エスピリト・サント州



もう揺られ続けて30分だ。

私はストライカー装甲車の中にいた。
車内では古いポップの曲が流れている。
それにあわせて目の前のガス上等兵が足踏みしているのが分かる。

「あまり気になさると、任務に影響しまっせ」

横のエイブラハム上等兵が突然、私に話しかけてきた。

「何のこと?」
「憂鬱、顔にそう書いてありますよ」

エイブラハムが茶化して言った。
エイブラハムは私の部下だが、実は同期だ。
軍のパソコンを悪戯にウイルスを流してそれがバレて、懲戒免職までいきかけたが、いざこざで何とか軍に残れた。
ただ、階級は当時の一等軍曹から4つも降格され、上等兵となった。以来、昇格はしていない。

「ほっといてよ」
「いくら曹長って言ったって、まだ思春期の少女。恋する乙女ですからね」

私はアシュリー・マシューズ。階級は曹長。所属はアメリカ特殊武装偵察部隊『スパロウ』だ。海兵隊にも偵察部隊があり、よくそっちかと言われるが、それは間違いなのでご注意を。
現在、18歳。今年の12月で19歳になる。
身長は結局伸びず、150cm止まりだ。この身長のせいで未だに小学生と間違われる。ただ、姿を隠すのには好都合なのだが。その点では偵察としてはうってつけか。
ギリースーツを着てると、なぜかよく頭を撫でたいと言われる。
酷い時は、かわいいコスプレだねって言われたこともある。
……なんだか腹が立ってきた。
違う話題にしよう。髪の毛は茶髪でポニーテールにしている。
茶髪は背景に溶け込みやすく、ギリースーツと同じ色だからだ。

私ぐらいの年齢なら高校に行っててもおかしくない。
だが、それは一昔前の話だ。
戦争が経済を支えている柱となっている現在、軍が半分、勉学が半分の割合で若者は道を進む。
軍隊希望なら小学校から国運営の軍隊養成学校に入ることができ、ひたすら軍隊について学ぶ。私もそうだった。
武器や兵器も豊富に所持している米軍には希望者が殺到している。
現にここ最近になって、とうとう勉学に進むものの割合が軍隊に進むものの割合を下回ったのだ。
21世紀に入り、戦争は合理的なビジネスにへと変貌した。
今や戦争は人類にとって、なくてはならないものとなってしまったのである。

「別に恋とかそう言う単純な感情じゃないし……」
「本当ですかね?」
「おい、エイブラハム。曹長に何聞いてんだ」

ハスケル一等軍曹がきつめの口調でエイブラハムに言った。