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本当にあったゾッとする話1 -祖父の葬式での出来事-

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祖父の葬式での出来事

妻の祖父が亡くなった。
妻の祖父は、妻の叔父と郷里の群馬県に住んでいた。
裏庭から赤城山が始まるような、そんな赤城山の麓だ。
私は妻と当時2歳の息子と、群馬に向かった。

祖父が住んでいた家は、築何十年か分からないが、相当に古い昔ながらの農家だった。
平屋で茅葺の家には、土間があり、土間の片隅が台所になっている。
トイレは離れの汲み取り式。
部屋数は多いが、全ての部屋が襖で仕切られており、襖をすべて開け放つと、だだっ広い大広間が現れる。
そんな家の南側の一室を黒白の垂れ幕で囲い、葬式が行われた。

読経が行われている間、静かにじっとしていられない2歳の息子を、別の部屋に連れて行くことになった。
その息子の面倒は、孫である妻が葬式の席から離れるのはいかがなものかと言うことで、私が見ることとなった。
私は、葬式が行われている部屋とは、ちょうど対角線で一番遠い北側の一番隅の部屋に息子を連れて行った。
北向きで窓がなく、ほとんど日が差さない陰気な部屋だった。
遠くに読経の声が聞こえる中、できるだけ息子を騒がせないように、息子と二人で遊んでいた。
すると、息子の様子が、途中から少々おかしくなった。
しきりに部屋の片隅に注意を向けている。
そこが気になって仕方がないようだ。
私はそこに何があるのか注意して見たが、柱と漆喰の壁があるだけで、特になにもない。
そのうちに息子は、我慢しきれないという感じで、その部屋の隅にとことこと歩いて行き、やや首を傾げて部屋の隅をじっと見つめ出した。
「どうした。そこに何かあるの?」
私が息子に尋ねると、息子はその部屋の隅を指さし、私に振り向いて言った。
「ねえ、この子だれ?」
「えっ?」
私は混乱した。
部屋の隅には誰もいない。
「誰もいないよ。」
私が言うと、息子はさらに指先に力をこめて何度も部屋の隅を指差し、強い口調で言う。
「この子だよ、この子。」
周囲の音が消え、読経の声だけが私の耳に響きだした。
薄暗い部屋が一層暗く、冷たくなった気がした。
私はなんとなく、これ以上この部屋にいるとまずい気がして、息子を抱え上げた。
「みんなの居る所に行こう。」
私はそう言って息子を抱えたままその部屋を出て、葬式の部屋に戻った。
そこは、南向きで明るい光に満ち、大勢の人が居た。