戦闘員
「おい、お前ら行くぞ」
「ナー」
俺はとある悪の組織に勤めている戦闘員である。賃金は少ないが、基本皆社宅住まいで三色つきだから文句は言えない。というか文句は言えない。基本的に勤めている戦闘員は「ナー」しか喋れない。そういうふうに声帯を改造されているからだ。怪人とかいうレベルの上の立場の連中は口で話せるのだが(しかし昆虫人間にもれなくされてしまう)戦闘員はただ忠実に仕事を遂行せよ、というところなんだろう。
「ナー」
「ナナー」
「ナナナー」
そして優秀な怪人につければ生命の心配はないのだが、バカなやつに当たるともれなくヒーローに対峙してしまう。そして退治されてしまう。怪人も戦闘員ももれなく爆死。というか爆殺パンチや爆殺キックをもった連中がへんてこな色したマシンに乗ってやってくるわけである。
「ナナナー」
「ナナー」
ヒーローに当たれば皆死ぬ。少なくとも戦闘員は。皆見捨てられるのである。どこからか連れてこられた人間が改造され、皆ヒーローに殺される。
ヒーローは罪なき人間は殺さないというが、攫われてしまったのは自己責任というところなんだろう。
抜け出したいけど、スーツが皮膚と同化して脱げない。
今日の作戦は化学工場の襲撃だ。耳元をかすめるバイクの音。その音がだんだん近づいてくる。