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彼との距離

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先日、社員食堂で午後の休憩を取っていたとき、同じ事務所内のあの子が語った。
そう語った。

「あのね。彼の事、始めはホントに意識するとかじゃなかったの。
でね、ほんの些細なことから話すようになったんだけど、その話もだけど話し方がうまいっていうか面白いの…。
全然分からない話をされても、すぅーっと耳に吸収されて、ふぅーん、そうなんだって知らない事が身近になっていくのがすごく愉しくて…。
話への興味がいつからか彼への興味になっていったのよ。
だから誘われた時は嬉しかったの・・・。
ねえ、傍に居て嫌じゃない感覚ってわかる?
誰彼構わず、その距離が大丈夫とかじゃなくて、ふと触れてしまってもいいかなっていうか、生理的に拒否っちゃう人だってあるじゃない。
でも彼には、アレルギーも拒否反応もなし。
ふぅー。
でもね。
彼と手を繋いだ時、『あ、これ以上触れたら駄目だな』って思ったの。
本気で好きになっちゃう…。好きになったら会いたい。
会いたいって思うのって触れたいって気持ちもあるのかな…。
手を繋ぐだけでも、キスするとかでも、ハグなんてことならとっても嬉しいけど、
そんなことがなくていいの。会えたってだけで嬉しくなるの。
でもこれって私の言い分なのかな?
やっぱり彼にしたらあんな事とかこんな事とか考えるんだろうか?
どう思う?…ってあなたも女だからわかんないか…。
彼ね、二人で会うようになってから会社であまり話さなくなった。
話す用事もないんだけど、通り掛かりに目が合うくらい。
会っているときに話すからかな。メールもするようになったし。
でもこの頃二人でも会わなくなってきたな…。
話すだけだからかな。
だって越えられないよ。越えて愉しいのはひとときだけ。
後姿見送って。そのうちそれもなくなってなんて。
ただ、会いたいだけなのに。見ていたいだけなのに。
顔も合わせられなくなるようなことしたくない。
もしメールも止める時がきたらどうなるのかな?
もう話すこともなくなっちゃうのかな…。
彼との距離が以前よりも遠くなっちゃうのかな?って…。
周りの人は話しているのに私は声を聞くだけの距離のまま過ごしていくのかな…って。
一人で考えていたら萎んじゃいそうだから聞いて貰っちゃった。
ありがとう。じゃあまたね。」

あの子はすっきりした顔で行ってしまった。
残された私はただ少し頷いて呆然としていた。
(彼?誰?)

  ― おしまい ―
作品名:彼との距離 作家名:甜茶