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チャーリー&ティミー
チャーリー&ティミー
novelistID. 28694
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八咫占札の日常 大アルカナ

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THE MAGICIAN 魔術師 相棒との出会い


「義輝さん。食事に行きませんか?シアさんもシノさんも、なんなら夢野さんも。」
談話室に集まっていた面々に八咫は声をかける。
シノとシアはみかんを食べながら。
夢野はテレビを見ながら。
義輝は雑誌を読みながら。
それぞれ炬燵の中に入っている。
そのみんながくつろいでいる真っただ中に八咫はいつものようにタロットをシャッフルしながら話しかける。
面々は一様に顔を見合わせそれぞれ
「美味しいご飯を食べたいのです……」
「お食事だぁ☆」
「いいんですか?」
「いいの?」
八咫に聞く。
八咫はにこやかに笑い答えた。
「この前寝ていたときに私の叫び声で起こしてしまいましたから。あと、夢占いの結果も原因の一つですね。」
八咫はいつものようにタロットを器用にシャッフルしている。だがいつもと違った。
「……八咫さん。それもしかして……。」
「ええ。これから仕事なんです。喫茶店で占いの仕事を少し。義輝君も夢野さんもまだ占っていませんし。占い料はただってことで。」
八咫はいつものTシャツではなくなにやら怪しげなローブを身にまとい、脇には拳大の水晶玉、さらにトランプ、ティーカップをぶら下げている。
ある種五月雨より奇怪な格好をしている。
「仕事なのについていっていいんですか?」
「……義君は心配しなくてもいいです。八咫さんはいいって言ってるんですから。」
「そうそう。いかなきゃ損損。夢野ちんも行こー。」
「えっ私も?」
「僕も行っていいですか?」
この部屋への2度目の来訪者、晩生内五月雨である。
どうやら今起きてきたばかりのようだ。
一応だが五月雨は八咫とはすれ違う程度しか関わりがない。
挨拶に行った際五月雨はどこかに出かけていたのだ。
「何か、こう、気になるんですよ。」
「五月雨様も勘が鋭いようで。」
まるで二人は心が通じ合っているように周りから見える。
しかし決定的に違うのは五月雨が現在を見ていること、八咫がうすらぼんやりとした未来を見ていることだった。
「で、どこ行くんですか?八咫さん。」
義輝がそう聞くと八咫は
「なに、知り合いのやっている喫茶店ですよ。」
と答えた。

駅から五分歩くとそこには喫茶店があった。
見た目だけで言えば魔術師がオセロカラーの双子を連れて、その後ろを洗面器をかぶった少女が歩いている様は異様だ。
そして一見普通な二人の人間が後を付いていく。
「八咫占札♪八咫占札♪(桃太郎のテーマで)」
シノは謎の替え歌を歌いながらあとをついてまわる。
「……幼児退行したようなお姉ちゃんもいいのです。ロリっ娘萌えです……。」
シアはなぜか顔を赤らめる。
「……。」
五月雨は無言で歩く。
「ねぇ。夢野さん。八咫さんって何かこう……怖くないですか?」
「いやあれは怖くないでしょ。あんなのよりストーカーとかもっと怖いのいるし。」
「それも怖いですけど。そういう意味の怖さじゃないです。オバケ的な。」
義輝は舐めまわすような視線で、そう、じっくりと八咫を目で見つめる。
「あ、実は未来人とか!で、運命が見える!って」
「さすがにないでしょ。それ……。」
夢野の指摘を受け義輝はガックリと肩を落とす。
「で、ですよねー。」
そのとき八咫の動きが止まった。どうやらお目当ての喫茶店についたようだ。
気付かなかったシノとシアは八咫に軽くぶつかってしまう。
「「おどろいたー……」」
看板には『Coffee Fortuna』と書かれていた。
「……ここが八咫さんの仕事場ですか?」
シアの問いに八咫は頷く。
「喫茶フォルトュナです。」
八咫は静かに扉を開けた。
「いらっしゃいませー。喫茶フォルトゥナにようこそ。」
出迎えたのは20代前半の男性。
ウエイターの格好をしているが胸についたバッチからは店長であることがうかがえる。
店の中の内装はギリシャチックとでも言えばいいのだろうか。
ルネサンス時代によく彫られた石像などが置いてある。
南は全面ガラス張りでありその喫茶店の神々しさに拍車を掛けていた。
「どうも玄野圭人(くろのけいと)と申します。」
軽く会釈をした圭人はそれぞれを席へと案内する。
「アニキー?八咫さんキター?」
厨房から可愛らしい声が聞こえる。
「縫さん。私はここです。」
八咫が少女に対し笑顔で手を振る。
厨房からひょっこり顔を出したのは高校を卒業したばかりというような顔つきの女の子。
名前は玄野縫(くろの ぬい)わ
「おい、縫!お客様からご注文を聞いてこい。」
びしっと指で刺された縫は敬礼。すぐさま皆の所に駆けていく。
「お、お客さん。ご注文はお決まりでしょうか~。」
「じゃあ私達はストロベリーパフェで☆」
一番手に手を挙げたのはシノ。
どうやらパフェが食べたかったようだ。
「……お口につく生クリームがやらしいのです。舐めてやります……」
前言撤回。
シノはすぐさまドリンクのメニューを見て注文する。
「やっぱりアイスコーヒーで。」
アハハハハハと笑いながら訂正するシノ。
だが既に後ろでシアは何か企んでるぞ。
だいじょぶか?シノ?
「かしこまりました。」
縫は手元の注文用紙に書き込んでいる。
「じゃあ次は俺で。」
義輝が手を挙げる。
「ウインナーコーヒーで、あとガーリックトーストと目玉焼きね。」
どう聞いてもモーニングセットにしか聞こえないと一同は腹を抱える。
義輝やあんたもう朝飯食ったろ。そんな声が聞こえてくるようだ。
「かしこまりました。」
縫いはさらさらと注文用紙に書き込んでいく。
「いやー、たのしみだなー。ウインナーが入っているコーヒーってどんなんだろう。」
「「「「「そんなコーヒーはありません!」」」」」
全員からツッコミを受ける。
あの五月雨でさえテーブルに手をつきツッコミを入れる。
双子は腹を抱えて床を転がりまわっている。
「へ?俺、生まれてからずっとそういうコーヒーだと……」
「……じゃあ次はわたしね?」
夢野が手を挙げる。
どうやら義輝に疑問を解消させる時間は与えないようだ。
「ここに書いてある女神フォルトュナの気まぐれサラダ、あと限定メニューのフォルトュナコーヒーをいただけますか?」
「ブーブー!夢野ちんずーるーいー!そんな豪華そうなの!」
「……そうなのです。」
「……ですね。」
「あーあ。俺もそれ頼めばよかった。」
一同は夢野に文句をつける。
ウエイトレスの縫はコホンと咳を一つすると夢野を青いカーテンで仕切られた部屋に連れていった。
「……じゃあ僕も同じのお願いします。」
五月雨は静かに圭人にその旨を伝えると青いカーテンの向こうへと消えていった。
「みんなずるいよ~!」
「……ずるいのです。」
そのとき別の店員によってウインナーコーヒーとアイスコーヒーが運ばれてくる。
「これがウインナーコーヒーか!」
義輝はのんきにウインナーコーヒーと目玉焼き、ガーリックトーストに舌鼓を打っている。
シノとシアはアイスコーヒーを飲みながら周りをキョロキョロ見渡す。
八咫がいないのだ。
「どこ行ったんだろ。」
「……きっと払うのが怖くて逃げたんです。地下帝国行きなのです。」

一番初めに部屋に入った夢野が最初に目にしたものはルーレットだった。
ルーレットに書かれた数字は0から21までの22個の数字。