夜中
しかし、今日は違っていた。全く眠くないのだ。
仕方なく、溜まっている本を片付けることにした。片付けると言っても、掃除ではなく読破の方なのだが、僕は本を読むのが遅かった。今は少し早くなったと思うが、"ノルウェイの森 上・下"を読み終えるのに半月強掛かった。
それに比べ彼女は恐ろしく本を読むのが早かった。そして僕の知らない作家の本ばかりを読んでいた。生粋の本好きだった。文学作品は読まないにしても、僕のように作家が決まってしまっているよりかは、遥かに自由で伸び伸びとした本裁きだと思う。
彼女にとって、一日に分厚い文庫を二冊読むことは、朝飯前のようだった。
僕は棚から"TVピープル"を取り出し、読み始めた。棚には"海辺のカフカ"や"星の王子様"、"肝臓先生"などが入っていた。返却期限は全て2日後だった。これは延滞する他ない。
"TVピープル"は5分の1程度読み進めてあり、うまく行けば-うまく行くってなんだ?-朝までには読み終わりそうだった。
しばらく本に熱中し、また時計を覗くと、3時半だった。無性にお腹が空き、布団から這い出て台所へと向かった。そして僕は茶碗に三杯の白飯を平らげた。自分でも驚いた。食後にプリンも食べた。彼女に報告したら"太るぞ"と低い声でたしなめられるに違いなかった。
その場面を想像すると、口元が緩んだ。