世界は今日も廻る 7 没ver
「なんの話?」
朝、爽やかな鳥の囀るに殺意を覚える、だからこのクソ雀は鍋で煮込んでミートパイでも作ってやろうかクソが。
「昨夜未明に発見された男女二名の遺体ですが、詳しい様子が解ったようです。中継で繋がっています。」
テレビの音量がデカイ。五月蝿い。あれ?このビルって昨日のビルか。もう見つかったんだ。
「これ、これ。お前さぁ、マジでやる気ないのな。」
「はい、こちらは現場である光栄ビルの前です。昨夜未明に発見された二名の遺体は、このビルの前に遺棄されていました。被害者は、小野田実さん、宮下真美さん。どちらも、このビルにある栄西出版に勤めていたとのことです。」
へぇー、あの二人そんな名前だったんだ。つか写真古くねぇ?いつのだよ。だいたい、殺害された人間の顔は堂々と写すのに犯罪者の顔は極力隠すとか意味わかんね。それに、あの手錠にかけるパーカー。パーカー掛けるならそれ専用のタオルとか持っていけよ。
「いやー、やっぱり死体芸術ってのはセオリー通りにやってナンボだと思うわけですよ。魔法陣描いてその中にバラバラ死体を放置してから黒魔術的な何かで儀式っぽいことしてからの遺棄。それがアリガチ設定なわけですよ。いや、ガチで言うならエコエコアザラクとか血文字で書いてもいいけど。それか、犬の首とか埋めてもいいけど。それが、なに?」
「あによ。」
こいつ、マジで五月蝿い。一緒にバラバラにして置いてくれば良かった。
「ただバラしてビルの前に放置って、なにそれ。」
「男女二名分の遺体は、体を切断された状態で路上に放置されており、警察では二人に恨みを持つ何者かによって殺害されたとしています。また、小野田さんと宮下さんは、フリーのジャーナリストとしても活躍しており、その線でも捜査を進めるとのことです。以上、現場から中継しました。」
そりゃね、あれが自殺だったらどうやったんだっての。人体の神秘だ。自分で自分をバラバラ殺害。うわぁ、なにそれホラーじゃんね。
「それが一番目立つだろうが。だいたい、色々用意したくせに途中で飽きたとか言って放置した人間の言う言葉か?それは。」
「あによ。」
「あによ。じゃないよ。お前が疲れただの重いだの言い出して、結局ぶちまけたまんま放置してきたんだろうが。」
「だっけかぁ?俺って、自分に都合の悪いことから忘れるように出来てるからねん。つか、俺にも珈琲チョウダイな。自分だけ飲むとかアール君、反抗期ですかな?」
「貴様に飲ます珈琲は一滴たりとも残ってない。マンションを出て向いのコンビニへ、ごーつーへる。」
「いやいや、コンビニじゃなくて地獄とか言っちゃってますからね。」
「ついでにパン買ってこい。」
「俺はパシリか?パシリなのか?だいたい何よ、自分だけ優雅な朝ごはんとかしちゃって。この家はお客様に珈琲の一杯も出さないわけ?なにそれコワイ。もしかして、ぶぶづけ食べていきなはれ。とか言われんの?もしかして粗茶ですけどってゴキブリ浮いてる茶でも出されんの?コワイ。恐ろしい子。」
うん、やっぱりパンはマフィンに限るね。ついでにカリカリベーコンと今日は目玉焼き。パズーパンとはいかないけど、まぁ気分で目玉乗せたりしてもいいよねん。ついでに言えば、珈琲はブラックに限る。不純物の混入禁止。
「さて、今回の事件はどう思われますか?」
「コワイですね。我々情報を扱う人間にとって、一番怖いのは逆恨みと仕返しです。正しい姿勢で報道を行えば、常にその裏で不都合な人間がいると私は考えています。ジャーナリストである以上、真実を伝えることは職業上の使命でもありますし。その結果犯罪に巻き込まれる可能性もあります。」
「今回、この二人は何か特殊な事件を追っていたと?」
「そのようですね。一体何に巻き込まれてしまったのか・・・まだ先がある若者である故に、功績を焦り無理な取材をしたのかもしれませんねぇ。」
人事だと思って、楽しそうだこと。まだ朝のニュースだからそこまで不謹慎に面白がってないけどね。これ、ワイドショーはもっと騒ぐよなぁ。センセーショナルだし。週刊誌の見出しとかどーなんだか。
ついでに、この死体の写真はすでにネットにアップされてるし。どうやら、早朝の新聞配達の学生だかが発見したみたいだし。そいつのツイッターとか大炎上よ?ブログまで晒されてるし。いくら警察が情報統制敷いたところで、今の世の中秘密にしとくのは難しいでしょうよ。馬鹿発見器とか呼ばれてるし、犯罪自慢する馬鹿いるし。犯罪は自慢することじゃないし、全世界に発信して何がしたいの?って感じじゃんか。そんだけ、馬鹿が多いというか先を考えてないというか。だからゆとり。とか言われんだよ。
「ただいまー。」
「お前の家じゃない。」
「パン売れ切れてたぞ。それから、新商品だって狩ってきた。スマイル肉まん。」
「・・・スライムの間違いじゃないか?青い肉まんとか完全に食欲を減退させようとしてんな。」
「乱獲されてんよ。これ、しかも170円もすんのよ。高くね?このサイズで。」
「・・・普通の肉まんだな。」
「お前、なに食べてんだよ。一個しかなかったのを俺が必死で買ってきたのに。何食べちゃってくれてんの?なにそれ、嫌がらせ?いじめ?ダメ、絶対。いじめ、カッコ悪い。」
作品名:世界は今日も廻る 7 没ver 作家名:雪都