小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

白の枯れ園と揺れる僕ら。

INDEX|3ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

サクラ、枯レテ。


「桜は、寿命が長い樹じゃ…ないのよ。」―――――――
あの人はそう、つぶやきました。
きっと私には聞こえないと思ったのでしょう。私は聞いていないと思ったのでしょう。
幼い私はわざと聞こえない振りをしました。
私は何も聞いていないと。何も聞きたくない。

桜―――私の名と同じ、私の名の由来。とても好きな花だった。
白い花びらが舞い散るのを見てはいつも、目を輝かせて見ていた。だけど、今だけはこの花が見れなかった。


その日の夕方、家に帰ってからあの人は出かけていきました。私は窓辺にたたずみ外を舞う花びらを見ていました。

りすとかっと――――それをすると死ねると、死ぬことができるとどこかで聞いたことがありました。

幼稚園の中で流行っていたコスプレごっこ。駄々をこねて祖母に作ってもらった純白のドレス。それを着て小さな手に握ったのは紅い斜陽と白いかけら達を映す『カッターナイフ』。
血管を切れと言われたような、けどできなかった手首じゃなくて、腕をうっすら切っただけ。腕から垂れる紅イ、赤イ雫が垂れて、純白を穢して。



思イダスノハ遠イ想イ出。



石を投げられて、血が流れたときに思い出した赤、赫、紅―――――あの日も晴れていた。冬の日だったけれど。
斜陽、手袋についた毒々しいほどに鮮やかな赫

引きつる投げたむかつく男子の顔、手袋についたアカイロ。知らずの内に口角が上がっていた。狂ってしまったかもしれない。もう仮面をつけているのは限界なのか・・・?
その次の年から、家の前の桜の片方が、急に枯れてしまいました。

あれからわたしのポケットにはいつも黄色い危険物――カッターナイフ。
「ガシャッ、ガシャッ」刃を出すときの音が響く。この音を聞いて落ち着いてしまう私は人間的にどうかと思う。


幼稚園の頃住んでいたあの町、醤油工場があって、いつも醤油の香りで満たされていたあの町。毎年祖母が遊びに来たときに見に行った秋桜の群生と大きな風車。
今は祖母も住むこの町で、私は―――――変われるのだろうか。今、変わろうとしている。

いま、目の前に舞い降りているのは触れるだけで融けてしまう白い欠片、そんな欠片は積もって庭園を白く染めていた。
想思花のような鮮やかな赤も、秋桜の暖かな色も。どれもいけれどまるでモノクロ写真の中に入り込んだかのような、色のない枯れ園も格段にいいと私は思う。
入母屋の屋根からの雪しづりも、グレースケールの空から降る雪も、雑音を全て吸い取っているようで。

いつか、近いうち私は今のこの13人だけで稽古をするのはできなくなる。それまで、それまでに私は何ができるのだろうか。

白いこの街と、騒がしい仲間の中で静かに亀裂が入り始めて。
淡い恋の始まりと、割れ出した13人。