秋の味覚
「このボケナスが! 梨は20世紀に決まってるってーの!」
「いやほら、涼音、好みっていうのは人それぞれだしさ」
「甘い、スイート、スイーツ!」涼音はものすごい勢いで手を顔の前で振った。「今問題にしてるのはあたしの好み。あんたやその他の人間などはどうでもいい!」
「あー、ははあ」
だったらなんでしゃべってんだよ、という声は出さずに友人はなんとなく愛想笑いを浮かべた。
「そもそも最近は甘い果物がチヤホヤされすぎてる! 甘ければいいってもんじゃないでしょーが! そんなに甘いのが好きなら砂糖でも貪り食ってればいいんだって! このスイーツ! スイーツ! スイーツどもが!」
「あはは」
もはや何も言えないという表情で友人はかわいた笑い声を出した。しかし、そこにハイテンションな山男が出現して、椅子に勢いよく座った。
「そうだよ涼音ちゃん! 君は正しい、まったく正しい! 最近の果物は甘すぎるのだ!」
「はあ? あんたはむさすぎるからさ、消えて」
「ぐっ!」
山男は胸を押さえて苦しそうにした。
「それだよ、そのビターなところが君は一味違うのさ! うげ!」
山男の額には涼音のボールペンが突き刺さっていた。ドン引きの友人を無視して、山男はボールペンを額に立てながら、満面の笑顔であった。
「ビターなのは君のその態度さベイベー」
涼音は無言でボールペンをさらに押し込んだ。
「うごぎゃぎゃがぎゃががが」
山男はもだえ苦しんで椅子から転げ落ちた。友人はそれを見て不安そうな不安そうな顔をした。
「えー、と。いいのそんなことして?」
涼音は特に気にする様子もなく、気楽な感じで立ち上がった。
「いいのいいの。それより甘党どもが集まるケーキバイキングに行かない?」