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南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
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『暴かれた万葉』 13

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『暴かれた万葉』 13


其の夜、再び春豊神社を訪問した本多刑事は、思いがけぬものを

目にした。

どうぞと言われる侭に上がり込んだ広間の座敷では、今まさに

「馬霊鎮め」の神楽の練習の真っ最中であった。

三管三鼓の楽の音に合わせ舞われる「馬霊鎮め」の神楽は、本多の

想像していた所謂お神楽とは全く雰囲気の異なる荘厳さを感じさせる、

ゆったりとした唐風の舞楽であった。

登場者は、旅人、馬、怪物と聞いていたので、どれが怪物役かと見比べるが、

三つともいずれも人間の顔である。

只、一つが如何にも恐ろしげな真っ赤な大きな顔なので、これが怪物役か、

と思うが、妙な事に身に纏う衣装が豪華絢爛、如何にも貴人の風情である。

これが、馬を食うのかと考えると、益々妙な感じになってくる。

確かに、奇祭と呼ばれるのも無理からぬ事と思えて来るのだった。

食うと言っても、舞楽ゆえに、馬役がすーっと舞台から降りるといったものである。

肝心の娘は、最後の場面に登場するが面などは付けず、鎮魂の祝詞を

朗々と唱うが如く読み上げるのである。

其の夜は、予想以上に時間も遅くなったので、改めて出直す事にした。

帰り際に、娘に言われた。

「御免なさい、今夜は」

「いいえ、また改めてお邪魔させていただきます」

暗い境内を歩きながら、目の当たりにした「馬霊鎮め」の意味有りげな

内容が気になっていた。

大木老人なら、何か知っているかもしれないと思った。


                         続