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山本 かの子(偽名)
山本 かの子(偽名)
novelistID. 34002
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【バツイチの娘】~成人期モラトリアム~

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【広汎性発達障害】。そう診断されたのは、
誕生日を迎えたばかりの23歳の時だった。

精神科の扉をノックしたのは、
21歳の時。

あたしには前科があったから。
20歳という成人になる節目の年。
10月の終り、少し肌寒さを感じる季節に、
はじめて右手に剃刀を持ち、左腕の上腕に剃刀をのせた。
少し戸惑いもあるなか、衝動的に右手に持った剃刀をゆっくりと力を加えひいた。


そもそもあたしは、
小学校の頃から『消えたい』という感情を抱いていた。
何か学校で嫌なことがあれば『消えたい』『誰か殺しに来て、あたしを』
高校生になると『消えたい』から
『死にたい』に変わった。
常に希死念慮が付きまとうあたしだった。

極端な発想で生か死か。
0か100か。
YESかNOか。
グレーゾーンがない、あたし。
だからすぐ何か嫌なことがあれば、
当事者回避をするように『死にたい』と云う。

まさか、自傷行為の常習犯になるだなんて、
予想もつかなかった
今では、左小指側の手首、左の肩に近い上腕に数ヵ所、
左の太ももに数ヵ所、白い傷痕が残っている。

20歳の頃自傷したことを【バツイチの母】に話すと、
『精神科へ行ってみたら』と云うことで
興味本位で通った、6月。

その時のあたしはすでに、
自傷行為癖も治っており(左の手首や左の太ももは後に自傷した痕)
決して鬱のような悶々とした情緒ではなかった。
むしろ、とてもハイテンションで、
精神科の初診をした。

そこが地獄へのはじまりだなんて。
精神科の先生が下した診断は、
『抑うつ』だった。
『抑うつってなによ?』
『あたしのどこがうつなわけ?』
疑問だった。
先生は『寝れてないでしょう?』とあたしに訊いてきた。
『いいえ、寝れてます』
あたしはそうはっきり答えた。
『寝れてないと思うから、眠剤と...』
処方箋には
眠剤と抗うつ剤と安定剤といった複数の精神薬が書いてあった。


当時、介護のアルバイトをしていたあたしは、
入浴介助中眠たくて仕方なかった。
アルバイトは楽しかった。
本格的に利用者さんと関わりながら、学べることが嬉しくて。
同時に、残りの学生生活は1時間かけて通学するようになった。
なぜなら一人暮らしをしていたあたしはアパートを引き払って
【バツイチの母】が住む祖父母の家で暮らすようになったから。

結構、大変だった。
週4回のフルタイムの介護のアルバイト。
週1回、朝早くに通学。
プラス、社会福祉士の実習が待っていた。

『あたしは誰よりも介護のスペシャリストになって文武両道でいく』
なんていう自負があっただろうし
同級生が就活に励んでいる中あたしはもうすでに
アルバイト先で就職することを決めていたから
『あんたらと違うのよ』
と虚勢を張っていた。



8月、社会福祉士の実習が始まった。
月曜~金曜日までは実習で土曜日は介護のアルバイトへ行った。
そんな日々が続いて、
嫌気がさしてきた。
思い出せない。。イライラするばかりで。
『どうしてもあと10日、実習に行けない』
と【バツイチの母】に相談した。
『休みなさい』
そうあっさり返事をした。

当時付き合って3年になる彼がいた。
『中出ししていいよ』

あたしはそう彼にささやいた。
それからあたしは実習へも行かず、
アルバイトにも行かず、彼のアパートで日々を暮らした。
けれど、埋まらない空虚感で
イライラしてついに
台所にあった包丁を右手に持った。
そして左の太ももに思い切り当て力強くひいた。
何度も何度も。。
誰かに八つ当たりすれば、
その分自分を傷つけた。代償として。

さらには精神薬とお酒を呑むようになったり
必要以上に薬を呑むODをするようになったりした。
そしてパチンコの日々に明け暮れた。

『不規則な生活しているからかな』
『少し痩せた気がする』

違った。
『中出ししていいよ』と云ったその言葉が...

見事に卵子は何億の精子から選ばれたひとつの精子と受精し
着床したことがわかったのは8月の終りだった。

月経不順のないあたしは、
すぐにわかった。そしてすぐに妊娠検査薬を使った。