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百物語事件 by炎舞

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Episode.1



「うう……あちーよ、あちーよー。夕方になってもちっとも涼しくならねー……」
 自室のベッドでだらだらと横になっている風間が、Tシャツをめくり上げながらだるそうに嘆いた。
 季節は八月の下旬。
 残暑見舞いのハガキが届くたび、「いまだに夏真っ盛りじゃあっ!!」と、破り捨てたくなるほどの暑さが続いている。夕方になってやっと肌を刺すような日が沈んだかと思って窓を開けると、ぬるい風が行ったり来たり……。
 プラス、夏限定の〝彼ら達〟の共鳴音が余計に空気の温度を上昇させる。
 〝俺達短い人生(?)なんだぜ!! ここで盛り上がらなくてどうすんだよ!!〟と、でも言っているかと思うほどの大合唱。
(…うるせえ…)
 眉間に皺を寄せたまま寝返りをして、ぼとっ、と畳に落ちる。そしてそのまま葡匐(ほふく)前進。もう起きて歩くのですら面倒くさい。
(どっか地下室とか涼しいトコに…、…ん?)
 襖を開け、上半身を廊下に出したところで、白い棒が何本か顔の前に転がってくる。
「ロウソク? なんでこんなモンが…」
「あー風間ゴメン! 落としちゃった。つーかあんた、なんつー格好を…」
 胸元にロウソクの束やら箱を抱えた嵐が、廊下を小走りで駆けてきて、怪訝な表情で風間を見下ろした。
「だってあちぃからダルくてよー。―――っしょっと。ほいよ」
 十八の健康体の若者が面倒くさそうに膝から身体を起こし、拾い上げたロウソクを嵐へ手渡した。
「てか、こんな沢山のロウソク、どうしたんだよ?」
「―――うん、さっき大広間で掃除してたら沢山ロウソクが出てきてさー」
 何故かは不明。
「折角だし皆で今晩、百物語でもやって涼しくなろうって話になったんだけど……良かったらあんたも混ざんない?」

(ひゃっ……百物語ィィーーーーーッ!!!?)

 ドンガラドーーーーーン!!!

 廊下の窓が眩しく光り、遅れて雷鳴が轟く。
 その瞬間、風間の脳裏におどろおどろしい幽霊や妖怪やらが浮かび上がってしまった。
(百物語って…一人ずつ怖い話してって全部のロウソクの火が消えたら何かが起こるってヤツだよな…!?)
 頭を両手で抱え、ガクガク震える風間の横で、
「わー、急に曇ってきた。外、真っ暗ー」
 ゴロゴロと唸りを上げる空を、ガラス越しから嵐が見上げる。
「す…涼しくなってきたことだし、今日は無理してやんなくても―――」
 明らかに震えている声で提案する風間だが、
「準備できたよー!!」
 廊下の端からバタバタと騒がしく登場した美世の声に、虚しくもかき消された。
「みんなには大広間にくるように召集かけといたから~」
「ありがと、美世」
「足りない分のロウソクも補充しといたよー」

(し…しまった…!!! 逃げるタイミングが…)

 テンポよくコトが運んでいるこの自体に、更に恐ろしくなる風間。
 普段は獣のように荒々しい性格の彼が、今では追い詰められたウサギのようだ。
「……あれ?」
 嬉々としてはしゃぐ美世が、二人から距離をとる風間の異様な落ち着きのなさに気づき、
「…どーしたの、風間ちゃん、震えちゃって。…もしかして、怖いのぉ~?」
 からかいながら笑う。そして美世の肩にその身体をおくガルーダでさえも、ニヤリ…と鳥のくせに、嘴の端を上げてバカにしたように笑った。
「そっ…―――!!」
 風間のプライドに火がついた!!

(年下の女とトリにバカにされてたまるかーーー!!!)

「そんな訳ねーよッ、俺、怖い話大好きだもんねー!!! これは今すぐ話したくてウズウズしてる武者震い(?)だッ!!!」
 目元はヒクヒクと痙攣し、額には大汗。口には何とか笑みみたいなものを浮かべ、前へ突き出した握り拳は―――小刻みに〝武者震い〟していた。
「ほほう…勇ましいな」
「…じゃあトップバッターは風間さんってことで」
 いつの間にか腕組みして後ろに立っていたのは、静と聖だった。

「!?」

 自分で自分の首を絞めてしまった風間。

(ああああ~~~~~!!!)

 彼の運命は如何に!?

作品名:百物語事件 by炎舞 作家名:愁水