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メタボ部長、苦悩の寝室。

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‐‐‐あ・き・た・ろ・う‐‐‐さん‐‐‐
‐‐‐つ、椿姫!‐‐‐
‐‐‐ふふっ‐‐‐‐そんなに興奮しちゃって‐‐‐‐
‐‐‐ちょ、ちょっと‐‐‐そ、そこは!‐‐‐
‐‐‐わあっ‐‐‐ご・り・っ・ぱ・ね?‐‐‐
‐‐‐ああっ!‐‐‐だ、駄目です‐‐‐
‐‐‐大丈夫、心配しないで。ワタシに任せて‐‐‐‐
‐‐‐もう、我慢出来ない!!!姫!‐‐‐‐



ドサッ!!!



下半身に感じた突然の痛みに、思わず飛び起きた。
‐‐‐何だ、夢か‐‐‐‐

突然の衝撃の原因。
ネグリジェが腰までまくれ上がった妻が寝返りを打って、私の側に転がって来ている。
規則正しく波打つ太鼓腹が、彼女の安眠状態を物語る。

妻。
32年前、結婚当初は、当時の人気だった沖縄出資のアイドル歌手に似ていた、愛らしかった妻。
それが、私、田房明太郎(たぶさ・あきたろう)が、実業団の名門メイン・ビールのマラソン選手を引退し、営業に回った頃から、私の体型の変化と歩調を合わせる様に、彼女のカラダもまた、大きくなっていった。
今では、街を歩くと、「ご兄妹ですか?」と言われる事さえある。

彼女は、「アンタが毎晩毎晩中洲で飲み歩いてるから、アタシは毎晩毎晩、孤食を続けたからこうなったのよ!」と、私を責める。
だが、来年30歳になる、パラサイトシングルの娘も妻と同じ体型‐‐‐。
何しろ、妻は揚げものが大好物。
揚げものが苦手な私の居ぬ内に、朝からとんかつ!という様な食生活さえおくっていた様だ。
だから、今の無残な体型は、私のせいではなく、妻のカロリー過多メニューの蓄積が原因である事は明快の筈なのだが‐‐‐。

「‐‐‐起きてるの・‐‐‐」

私の回想を止める、妻の一言。

「‐‐‐いや、もう、寝る‐‐‐」
「あらっ!やだ‐‐‐どうしちゃったのよ?こんなに‐‐‐‐」

妻が私の下半身を指さす。

あっ!

ダイエットのために通うジムで出会った23~4歳の憧れの美女、椿姫との際どい場面を夢見てる内に、年甲斐もなく興奮してしまっていた!

「‐‐‐したい?‐‐‐」

妻なりに、艶を含んだ眼差しで私を誘う。

妻との性交渉。
今の私にとって、これ程の重労働はない。
お互いの肥満体を持て余しながらの結合は、まるで、プロレスの寝技合戦の様なハードなテクニックと体力が不可欠。
終わった時には、フルマラソンを走り終えた位に消耗する‐‐‐。
だから、私は、妻から、季節労働者、と言われる程度にしか求めない。
妻は不満な様だが、明日も仕事の勤め人、体力保持は必須条件だ。

これが、椿姫だったら、すぐに武者振りついただろうが‐‐‐。

「‐‐‐いや、トイレで用を足せば収まるから、気にしないで、寝ていて‐‐‐おやすみ‐‐‐」


不満気な妻の視線を背に浴びながら、私は寝室のドアを開けた‐‐‐。
作品名:メタボ部長、苦悩の寝室。 作家名:RSNA