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この世で一番名前の長い男

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ある丘の上に3人の男が集まって、誰がこの世で一番名前が長いかを勝負することにした。
 最初の男は法律家だった。彼は役所に提出する改名手続きの書類を見せ、所狭しとびっしり書かれた文字を読み上げて「これが法律の許す限り一番長い名前だ」と言った。
 次の男は宗教家だった。彼は神に祈りを捧げた後、「私は悟りを開いた。私は無であり有であり、個であり全であり、何者でもあり何者でもない。私の名前はこの世にある名前をすべて超越した名前である」と言った。
 最後の男は羊飼いの老人だった。彼は「私の名は…」と言った後、長い言葉を唱え始めた。彼の名前は本当に長い名前だった。彼はひたすら自分の名前を唱え続けた。一時間、二時間、三時間。
 あまりの長さに他の二人は驚いた。彼は日が傾きかけても唱えることをやめなかった。二人は彼が尋常でないことを理解し、すぐに降参した。それでも彼は唱えることをやめなかった。二人は彼の頭がおかしくなったのかと思い、力づくで止めようとした。それでも彼は唱えることをやめなかった。結局彼は三日三晩休まずに名前を唱え続け、そしてついに息絶えた。
 二人は彼を丁重に弔い、丘の上に葬った。墓標には「この世で一番名前の長かった男」とだけ書かれた。
 彼は「あの世で一番名前の長い男」になったのだった。