俺とみこの日常 6話
「あ、涼くん!蒼大起きたよ!」
目の前に、母ちゃんがいる。
「菜緒ちゃん、蒼大に胸触られてない?」
向こうから親父の心配そうな声が聞こえてくる。
「も〜、涼くんったら。違うでしょ?私が、触らせようとしたんだから」
…なんだ?この状況?
まとめてみよう。
1.親父&母ちゃんの帰りを待っていたら、俺とみこは知らないうちに寝てしまった。
2.親父&母ちゃんが帰ってきた。
3.何を思ったか、母ちゃんが俺に胸を触らせようとしてきた。
4.親父は触らせまいと俺に何かしらの攻撃をした。
5.俺が起きた。
うん。多分こんな感じだ。
「3で何があった?」
つい、口に出して言ってしまう。
それを見逃す親父ではない。
「3?菜緒ちゃんのおっπ(自主規制3度目)はGカップだぞ?」
「誰もそんなこと聞いとらんわ!!」
想像の斜め上をいくギャグ(本人的には本気)に、口調がいつもと違ってしまった。(←文法的におかしい)
「なんで、”母ちゃんが俺に胸を触らせようとしてきた”!?」
すると、またしても、想像の斜め上をいく答えが返ってきた。
「帰ってきたら、誰も起きてなくてさびしかったから」
『誰も起きてなくて寂しい=息子を殴ろう』にはならないはず。
「涼くん、答えになってないわよ?」
母ちゃんのツッコミが入る。
本当はね、蒼大。という前置きの後、
「今日、涼くんをラブホに誘ったら、断ってきやがったからその腹いせに蒼大におっπ(本日4度目)を…」
真面目な返答かと期待した俺がバカだった。
「菜緒ちゃん、ごめんなさい!!」
親父の姿勢が、『座ってる→土下座』に至るまで、0.5秒とかからなかった。
「だって、折角若返ってるんだし、楽しんだって、ねぇ?」
母ちゃんまで暴走モードに?
え?なんで?なんで俺の周り『暴走モード』がある女子ばっかりなの?
「いや、ねぇ?って言われても…」
もっと別の楽しみ方をしたらどうか。とは、怖くて言えなかった。
「だって、聞こえなかったから…」
親父の声は少し震えている。それに声自体が小さい。
「え?なんて?」
「菜緒ちゃんの声が聞こえませんでした」
「………そうなの?」
「はい、そうです」
「なら仕方ないわね」
「本当ですか!!ありが…」
「とか言うわけナイデショ?」
母ちゃんの目が据わっている。
よし、みこを連れて逃げるか。ここは危ない。
ばれないよう、みこをおんぶする。
そして、ドアを開けようとした瞬間。
「ドコニイクノ?ソークン」
恐怖から、声が震えてしまう。
「ど、どこって、2階にひ…行こうかな、と」
「蒼大今お前避難って言いそうになったろ!?」
土下座状態の親父が言う。
アナタハダマッテナサイ。そう制した後。
「いいわよ。早く寝なさい」
やさしく、そう言うのだった。
みこをみこの部屋に置いてきた後、再び1階に下りてあの惨劇を見る気にもならず、すぐに寝た。
作品名:俺とみこの日常 6話 作家名:ざぶ