『暴かれた万葉』 7
『暴かれた万葉』 7
本多刑事は話を聞いていて、素人ながら思った。
このようなセンセーショナルな新解釈は学術的にどれ程の価値が
あるのだろうか?
何か隠されていた歴史的事実が、この新解釈により陽の目を見る
ことになるのだろうか?
若し、そうなら大変な発見だろうに、老人は無欲にも簡単に披露して呉れた。
ところで、懸案の殺人事件とは、どう言う関わりを持つのだろうか?
「凄いお話に驚いています。ところで、新しい解釈に関連する史実などは
あるのでしょうか?」
「史実? 資料なら有るよ」
「何処へ行けば見られますか?」
「市の図書館で見られるよ。「K城誌」か「K郡誌」と言えば、判る」
「K城誌かK郡誌ですね。有難う御座いました」
「何か聞きたかったら、また、来なさい」
「有難う御座います」
本多は大木老人宅を後にして、早速市の中央図書館に急行した。
他にもいくつか図書館があることは知っていたが。
図書館のカウンターで聞いたところ、「K城誌」は毛筆による草書体で一般向きでは
ないので、「K郡誌」が読みやすくて良かろうと書庫から出して来て呉れた。
昭和二年の発行でK郡の教育会の編纂によるものだった。
本多は、ページを捲ってゆく内に、目を惹くものを見付けた。
(これだ! 大木老人の言っていたのは!)
続
作品名:『暴かれた万葉』 7 作家名:南 総太郎