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南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
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『暴かれた万葉』  4

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『暴かれた万葉』 4


K市警察署の刑事一課勤務の本多隆次は、万葉公園殺人事件の担当を

命じられてから、何回か殺人現場である公園の歌碑に通っている。

これまで周囲を隈なく物色したが、新たな発見物はなく、残るは歌碑だけとなった。

当初から、本部内でも死体と歌碑との関係が議論の対象となった。

しかし、死体が置かれたものか、本人が歩いて来たものか、また、偶然あの歌碑の前だったのか、

否か、など不確定要素が多いため、結論としては、

「死体と和歌の内容とは関係有り」

との前提で捜査を進めることで意見が一致した。

歌碑に刻まれた万葉和歌は、

「馬来田の嶺ろに隠り居かくだにも国の遠かば汝が目欲りせむ」

とあり、

遠国での三年間の防人の役務を負うた男が、恋しい者との辛い別れを歌ったとされている。

この歌の内容と殺された麻倉幸三とが、どう関わり合うのだろう。

辛い別れを嘆いての自殺なら、関わりも出て来ようが、他殺との判定である。

本多がいくら考えても答えは出て来なかった。

今日も、いつも通り朝一番に来てみると、歌碑の前に花束が置いてある。

(花か? 被害者は独身者で、その上、身寄りもないと聞いていたが、花を上げる人が

いるとは?)

と思いながら、花束を包んだ包装紙に目を遣った。

透明の包装紙は店の名前が印刷してある。

「垣田生花店」

住所は市内になっている。

本田は手帳を出すと書き止めた。

見たところ、花は未だ新鮮で昨日か今朝置かれたものらしい。

兎も角、生花店に行って見よう。

買い主が判るかもしれない。


駅に近い大通りに面した「垣田生花店」はすぐ判った。


店主の女性の話では、買いに来た客は、若い女性で、これまでにも

時々来たと言う。

残念ながら、名前などは判らないと。

ただ、春豊神社の祭礼の折、お札を売っていたのを見たと言う。

巫女か?

さすれば、春豊神社に参ろうではないかと、本多は車を走らせた。


      続