笑ミステリー 『女王様からのミッション』
クラマ姫は青い光の中へとすーと消えて行き、高見沢一人がUFOの船内に残されてしまった。何もすることがない。
高見沢はその時間潰しのためなのか、ゆっくりと脱ぎ捨てていた服を着る。そして、クラマの抜け殻を未練がましく抱きかかえながら、その後三十分ほど待っただろうか。それは前触れのない出来事だった。
青い閃光が不意に青バラの絨毯の中心に走った。それと同時に、クラマがまるで彗星のごとくそこに現れ出てきたのだ。
電撃的な眩しい光が消え、空間が仄かな青い光の静寂に戻った時、クラマが高見沢に微笑んできた。それは極めて幸せそうに。
それもそのはず、そこにはクラマ一人だけではなかった。クラマの横には爽やか系の好男子が……。そう、イケメンが一緒に並んで立っていたのだ。
その男の瞳は、もちろん深い色合いのグリーン。高見沢でもゾクゾクッとするほどのハンサム・ガイだ。
クラマはよほど嬉しいのだろう。美しく色調変わりしたグリーン・アイズを潤ませている。そして、もう絶対に離さないぞという意志を滲ませながら、その男の腕にしっかりとつかまっている。
どう見ても美男美女のお似合いカップル。微笑ましいし、羨ましい限りの二人なのだ。
「クラマ姫は、こういう男が好きだったのか、なるほどなあ」と、高見沢は一人納得する。
だが、我に返れば、任務は提灯持ち。つまり水先案内。
ここに至るまで結構骨折りだった。しかし、まだすべては終わってはいない。高見沢は「さっ、もう少し頑張ってみるか」と呟き、気を取り直した。そしてクラマ姫に、その喜びに応えるように声を掛ける。
「クマラさん、お帰りなさい。王子を見つけ出せて良かったね」
するとクラマは、そのイケメンの手を引っ張り、高見沢の所までやって来て弾んだ声で紹介してくれる。
「高見沢さん、私の恋人のクカンテーツ王子よ、よろしくね」
高見沢はその紹介を受けて、「私は、高見沢一郎です。クカンテーツ王子さんですよね、長年の隠遁(いんとん)生活、御苦労様でした。それにしても、もうクラマ姫を手放さないように」と、別にしなくても良い注意をしてしまう。
作品名:笑ミステリー 『女王様からのミッション』 作家名:鮎風 遊