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椿姫、秘密の嗜好

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24歳の女子に対して、どうしてみんな同じ質問しかしないのかな?
「彼氏はいるの?」
「クルマは何が好き?」
「ジャニーズでは誰が好み?」
「合コン来ない?」
「ケータイ番号とメール教えて!」

私、裕子。
2年前に大学を卒業して、今、福岡に本社がある精密機械メーカーに勤めている。
男女雇用機会均等法が定着した昨今、私も理想と希望を持って、社会人の仲間入りをしたつもりだったが、配属された調達部では、コピー、お茶汲み、会議資料ファイリング等、男性社員の補助業務ばかり。
当然、忙しい筈もなく、終業時間の5時半には、自分の仕事は終わる。

その後の時間‐‐‐これが一番頭が痛い!

私の勤める精密機械メーカーの調達部には、様々な人がやって来る。
大手商社、部品メーカー、素材メーカー、下請会社‐‐‐。
私は毎日、何人もの来客にお茶を出す。
その中で判った、一つの傾向。
業績の良い会社からは、いかにもやり手、という感じの、パリッとスーツを着こなした若手社員が来るし、業績の苦しそうな会社からは、白髪混じりの中年のおじさん(社長さんだったりする)が、皺だらけの作業服のまま来たりする。

私は、外見が、寺田椿とかいうモデルさんに似てるらしい。
どんな顔か知らなかったので、ネットで調べてみると、確かに似てるかな?

だから、という訳ではないだろうが、毎日、来客の若手から、アフターファイブに誘われる。
「天神で感じのいい店見つけたんだ。」
「本場顔負けの中華料理ご馳走するよ。」
「今日、クルマで来てるんだ。ドライブでもどう?」

いい加減にしてよ!
私はアンタ達に何の興味はないの!
‐‐‐といつも心の中で叫んでいる。
しかし、会社にとっては重要なお客様なので、そうとも言えず、

「ありがとうござます。折角のお誘いですが、夜は習い事があるので都合がつきません。今度、ウチの課長達も含めてご一緒させて下さい。」
と、丁重にお断りしている。
‐‐‐課長と一緒に‐‐‐
この一言で、大抵のエリート達は、察してくれる。
‐‐‐脈はないな‐‐‐と。

しかし、時折、本当にごく稀に、中年のおじさんから、静かに、且つ粘り強く誘われる事がある。
「‐‐‐習い事が終わってから、ほんの少し、どうですか?‐‐‐」
冴えないおじさん。
ワイシャツの襟の黄ばみ。
突き出たお腹。
皺だらけの顔。

何故か私は、こんなおじさんに冷たく出来ない。
時には、抱きしめてあげたくなる事もある。
恐らくおじさんフェチなのだろう。
他人には絶対に言えない、私の嗜好‐‐‐。

勿論、だからと言って、個別に会う訳にはいかない。
しかし、何人かには「メール下さいね。」とアドレスを教えてしまう。
尤も、ケータイメールが出来そうな人は一人もいないが‐‐‐。

実際、私は、毎晩、エアロビクスを習っている。
私の通っているスポーツクラブは、私の住んでいる大橋駅前にあり、エアロビクスの他、プール、テニス、スカッシュ等あらゆるスポーツが夜中まで楽しめるため、かなり会員が多い。

特に、平日の夜ともなると、メタボを気にした、私好みのおじ様達が集まって来る。
ここで、彼等の視線を浴びるのが、今の私の最高の快感!
だから、思い切り手足を露出したウエアを選ぶ。

何気ない風を装いながら、チラチラと私を盗み見てるおじ様達‐‐‐。
あの人は昼間どんな人なのかな?
エリートなのかな?
それともリストラされそうなのかな?
奥さんいるのかな?
まだエッチ出来るのかな?
等と想像しながら、思い切り手足を動かす‐‐‐‐ああっ!気持ちイイ!!

私の一番のお気に入り。
絶対にタオルを持ってこないおじさん。
最近、メイン・ビールの「あの日に帰れるビール」に出演しているメタボ部長役のおじさん。

不幸せそうな表情。(まるでスーザン・ボイルだ!)
醜く突き出たお腹。
きっとエリートじゃないんだろうな?
リストラされないのかな?
そんなイメージが、私の母性本能をくすぐる。

この間、少し挑発しちゃった。
タオルを持たないで、Tシャツの前を捲って汗を拭うおじさんの隣のエアロ・バイクに座っちゃった。
チラチラと私の方を盗み見るメタボ部長。
何だか、とっても可愛思えて来たので、わざと目を合わせて、にっこりと微笑んであげた。
そうしたら、真っ赤になって、Tシャツで顔を隠しちゃった。
お腹は丸見えなのに!

か・わ・い・い!!
しばらく続けてみようかな?

これからもよろしくね!
私のスーザンおじさん!
作品名:椿姫、秘密の嗜好 作家名:RSNA