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南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
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『暴かれた万葉』 1

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『暴かれた万葉』 1


広大な水稲地帯を一直線に横切る広域農道を、こうして車で走っていますと、

日頃見慣れた風景にも、実は色々な歴史が積み重なって刻み込まれている事実

にふと気付くのであります。


古代から良好な稲作地帯として永い歴史を持つ目の前の田圃や、背後に続く山並みは

千三百年前と概ね同じ姿を今も見せて呉れている思いますと、感慨深いものがあります。

そうした風景の中で、唯一美観を損ねているのが、田圃の向こうに見える高さ数十メートルの

茶色の斜面であります。


その昔、鏡が出土して以来、鏡峰と名付けられ、漢詩にも詠まれた程の美景だった筈の、この

界隈に君臨した国造の古墳ではないかとも言われた遺跡の残骸であります。

土砂災害防止の目的とは言え、無残に削り取られて、古墳本来の形体を全く留めていないの

は、大変残念な事であります。


我が国の自然その他に対する美的感覚の欠如を示すほんの一例に過ぎませんが。


さて、その古墳跡に近い某神社での事件から、物語を始めると致しましょう。


某神社と申しましたが、実は大変永い歴史を持つ、由緒ある神社で、伝承に依ると

第二代スイ靖天皇の時代に創立された二社の内の一社で、他の一社とは山梨県

中道町の諏訪神社だそうです。


事件と申しますのは、町の消防団の一員の話によりますと、その神社の境内にある幾つかの

小さな社の一つが焼失しましたが、一体誰が何故、火など付けたのか全く見当も付かないとの

事です。


良く聞きますと、、焼失物は縦横高さ1メートル程度の立法体に過ぎない小さな祠だとの事で、

神社の関係者も、皆一様に首を傾げるばかりだったそうです。


その祠とは、何を祀(まつ)るものか?

祠の中には、どの様なものが入っていたのか?



           続