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見栄と本能

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「ねえ、陽子、最近、上手く行ってる?」
高校時代からの親友、朋美の問い。
「‐‐‐‐う~ん、まあまあかな?‐‐‐‐」
「そう!良かった!陽子は昔から理想が高いから、心配だったんだけど、もう、大丈夫そうだね?」
「トモの方はどうなの?ラブラブ?」
朋美が相好を崩して、嬉しそうに答える。
「幸せ!‐‐‐あのね、実は‐‐‐私、9月に結婚するの!」
思わず、顔が強張る私。
朋美も私も、福岡生まれの福岡育ち。
高校、大学一環のお嬢様校を卒業して、お互い、会社は違うが、福岡ではトップクラスの企業に勤めて6年目。
イマドキの女性の平均結婚年齢28.9歳へのカウントダウンが始まっている、微妙な年齢に差し掛かっている。
同じ様な境遇の二人。
しかし、一番の違いは、朋美には高校時代から付き合っている彼氏がいるが、私にはいない、という事。
ぽっちゃりして、おっとり系の朋美と、スレンダーで、自分で言うのも何だが、イイ女系の私。
なのに、昔から、朋美の方が、男に不自由しない。

朋美の彼、浩二クンは家業の建設会社の跡継ぎとして、修行中の同じ歳。
工業高校を卒業してから、現場に飛び込んだ、究極のガテン系。
ルックス的には、エグザイルのAKIRAに似たイケメン。
私達の高校時代の文化祭で、最初、私をナンパして来たのだが、高校名を聞いた途端、私のシャッターは下り、逆に、朋美にスイッチが入った事で、二人は付き合い始めた。

「朋美、浩二クンでいいの?高卒だよ?」
彼に夢中になっている朋美に、私は何度も、思い直す様に言ったのだが、彼女は、
「そんなの関係ないの。何て言うかな?‐‐‐相性がイイの。」
と繰り返すのみ。
恐らく、付き合いだして、すぐに寝たのだろう。
捨てられなきゃいいのに‐‐‐‐。
そんな、私の心配をよそに、二人は熱々の交際を続けて来た。
10年近くが過ぎ、ようやく、朋美のご両親も認めたのだろう。

一方の私。
彼氏らしき存在は、何人かいたが、どれも長続きしない。
「陽子は、本人以外のブランド条件に拘り過ぎだよ。結局、男と女は相性だよ。見栄なんかいらないよ。」
そう、朋美に何度も諭されたが、私は、どうしても相手のブランドに拘りを持ってしまう。
学歴、勤務先‐‐‐‐。
福岡では名の知れた学校を卒業し、有名企業に勤務している私は、相手側には、それ以上のバリューを求めてしまう。
友達に聞かれた時、羨望の眼差しを受けるために‐‐‐‐。

「今の彼、繁クンとは続きそうなの?」
朋美が心配そうに聞く。

繁とは、朋美には内緒だが、会員制の婚活サークルで出会った。
福岡出身、東京の三田大学を卒業して、メガバンク系のシンクタンクに勤める2歳上の繁。
ルックス的には、細身、色白の谷原章介系のイケメン。
これなら、誰からも羨ましがられる!と思い、私から猛アタックして、付き合い出してもうじき1年。
今は、週末、繁の部屋で過ごす、という半同棲をしている。
既にプロポーズをされているので、両家の親公認だ。

但し、一つだけ、誰にも言えない欠点がある。
繁は、私を求めて来ない。
勿論、1回もなかった訳ではないが、それも、私の方から迫りまくって、ようやく‐‐‐‐という具合。
「私、魅力ないの?」
ベッドで、繁に尋ねた。
「別に、しなくてもいいじゃない。疲れるし‐‐‐‐。」
「でも、男の人って、しないと駄目なんじゃないの?」
「そういう気分になったら、お金で解決出来るからね。自分から、何もしなくてもいいし、便利だよ。」
!!!!
「繁クンの初体験の相手はどんな人だったの?」
「卒業と就職祝いに、ママからお金を貰って、吉原のソープランドに行ったんだ!繁クンも、もう、大人にならなきゃね、って言われて。」
!!!!
「普通の人とはなかったの?」
「うん、陽子の前に、婚活で知り合った子が初めてだったけど、何故か、怒っちゃった。」
「ひょっとして‐‐‐‐。」
「服を脱いで待ってただけなんだけどね。」
!!!!

「ね、どうなの?」
朋美が私の返事を促す。
‐‐‐‐‐
幸せ一杯の笑顔の朋美。
逞しい浩二クンにいつも、全身を愛されているのだろう。
‐‐‐‐
悔しい!!
私の方が美人なのに!
私の方がブランド条件の揃った相手なのに!

でも、マザコン、素人童貞の繁との結婚生活は、考えるだけでおぞましくなっている自分がいる。
だが、独身女性比率が、男性のそれを大幅に上回る福岡では、繁以上の条件の相手を探す事は大変だ。
ブランド条件を考えなければ、そのハードルはかなり下がるのだが‐‐‐。

見栄をとるか?本能に従うか?
今、私は、人生で最大の岐路に立っている。
作品名:見栄と本能 作家名:RSNA