紫の空
逆上がりするてっちゃんを
イブちゃんが滑り台の上からめそめそしながら睨んでいた
空が紫になってきて
屋根の上でカラスが夜にむかって叫んでいる
イブちゃんは泥んこになった靴下をてっちゃんにむかって投げつけた
てっちゃんは出来ない逆上がりをやめない
イブちゃんは何度も
てっちゃんなんておいて帰ろうと思ったけれど
カラスの黄色い目と紫の空が足に突き刺さって
それをほどいてくれるのはてっちゃんしかいなかったのだ
公園の隣には田んぼがあって
死んだかかしの目に見つめられてついにイブちゃんは泣きだした
涙で前は見えないし
大きな泣き声で何も聞こえない
紫の空に水面が揺れている
冷たい手がイブちゃんの涙を拭いてそこには怒った顔のてっちゃんがいた
てっちゃんが滑り台を滑っていく
イブちゃんもあとに続く
小さな手を引いててっちゃんは早足で歩いた
紫の空にきらきら星が輝く
イブちゃんは走り出しててっちゃんを引っ張った
白い息と晩ごはんの匂い
イブちゃんはもう一度大きな声をあげて泣いた