眠らない街、東京。
「はーっ、はっはっはーっ。貴様ら、みんな死ね」
両手にマシンガンを持った男が辺りかまわず乱射している。逃げ惑う人々。音をたてて割れるショーウィンドウのガラス。硝煙の臭いが鼻を衝く。
「やめろ! 私が相手になろう」
一人の男がすっくと立ち上がる。
「面白い。蜂の巣にしてやる」
舌なめずりする殺人鬼。しかし、注意が男にそれている隙に、もう一人の男が殺人鬼の背後を取った。
「おいたが過ぎるぜ」
首の後ろに手刀を叩き込まれ、殺人鬼はあっさり崩れ落ちた。街が歓声に包まれる。
そうこうするうちに、装甲車が走行してきた。遅きに失した機動隊の到着かと思ったが、様子がおかしい。中に乗っていたテロリストだか「いつか殺すリスト」だか知らん奴が、学生服を着て拡声器でがなりたてる。
「今すぐ降伏すれば幸福になれる。さもなければ、汚れは、こう拭くのだ、というところを、見せつけるぞ」
店を漬けられても困るが、紅白まんじゅうも食いたくないので、ヒーローを呼んだ。
「いなりパンマーン」
(説明しよう。いなりパンとは、パンの中にいなり寿司が丸ごと1つ入った袋パンである。街角のパン屋さんではなくスーパーで袋パンとして本当に売られていたのである。筆者は25年ほど前に1度だけ遭遇し、すかさず買って食べたのだが、意外に旨かった。なので、当時大学生だった筆者は、速攻で大学生協にいなりパンを販売するよう要望を出したが、にべもなく断られた。ウチの大学には白石さんのような人はいなかったのである。)
「やぁ、僕、いなりパンマン。僕の顔をお食べ」
「誰が食うか、そんなゲテモン! いなりか、パンか、どっちかにせぇや!」
「ひ、ひどい。あんまりだ」
いなりパンマンは泣きながら駆けて行きました。
「役に立たねーな。よし、こうなったら」
「どうするんだ?」
(だみ声で)
「ぱぱら、らっぱっぱ~。金で解決~」
「誰の真似だ」
「いや、その辺は、色々うるさいから」
「しかし、金で解決って、そんな大金あるのか?」
「大金は要らない。行って来る」
何やら交渉をしていたが、なんと、あっさり追い払った。
「お前一体、いくら渡したんだ?」
「10バーツ」
「バーツ? って、タイの通貨だろ」
「いやぁ、昔から言うだろう『テンバーツ、てきめん』ってね」
「お後がよろしい様で」