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擦り切れ

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今年も、いつの間にか冬になっていた。
 いつもこうだ。気付いたら、冬になっている。手がかじかむし、体が寒さで震える。俺は家では裸足でいるので、床の冷たさも冬を伝えてくる。俺は、あんまり冬は好きじゃない。
 そりゃあ、冬にだっていいところはあるさ、例えば、あったかいものがおいしくなる。鍋とか、缶コーヒーとか。でも、冬は好きになれない。

 理由の一つは、雪だ。俺は自転車で通学している。雪に降られると、移動手段が徒歩しかなくなる。はっきり言って、面倒臭い。
 通学だけじゃない。ちょっと遊びに行こうにも、ここいらは田舎だから、電車もほとんどない。だから学生はよく自転車を使うんだが、冬はこれができなくなっちまう。そういうわけで、なかなか遊びにも行けなくなるってわけだ。
 他にも理由がある。冬は、寒い。とにかく、冷える。人の温もりが欲しくなる。でも、俺はアパートで独り暮らし。それに、彼女も友達もいない。要するに、孤独だ。冬は、とにかく寂しさが増す。だから嫌なんだ。

 それに、これは冬だからというより、冬にあるというだけのイベントだが、クリスマスがある。これが嫌いだ。
 いや、クリスマス自体は別に嫌いって訳じゃない。いわゆるカップル共が湧いて出てくるのと、やけに色々なところがクリスマスだクリスマスだと浮き足立っているのが嫌なんだ。
 なんでクリスマスが近いからって焦ってカップルになろうとするような心理が働くんだ?そんな即席で作られたカップルのうち、どれだけが上手くいく?きっと、上手くいかないカップルのほうが多いだろう。
 クリスマスより随分前から付き合ってる連中が、堂々とカップルアピールをし始めるのも気に食わない。二人っきりで部屋でいちゃついていればいいじゃないか。それが、なんで図書館や、本屋、電車内、コンビニなど、所構わずいちゃつきやがるんだ?人の迷惑も考えろ。
 コンビニでバイトしてるときに、二人で手を繋いで買い物に来て、20分も30分も店内ふらふらして、結局大したものも買わずに帰っていくカップルを見ると、思わず中指を立てたい気分になる。おっと。これは、別にカップルに限った話じゃなかったな。ただのバイト先であったことの愚痴だった。
 しかし、クリスマス周辺の恋愛関連で一番嫌な気分になるのは、ネットでの恋人出来ました宣言かもしれない。なんでネットで公表する必要がある?自慢か?ああ、自慢だろうよ。どうせ、お前らは幸せにクリスマスを過ごすんだろうよ。ようござんしたね。畜生。
 なぁ、リア充共。ただ二人きりで幸せを味わっていれば、俺みたいな奴は苦しまなくて済むんだよ。わかるか?わかんねぇからやってるんだろうな。いや、わかってるからこそやってるのか?自慢げに自分の幸せ見せつけて、俺みたいな奴の反応を見て嘲笑ってるのか?そうでもしないと自分の幸せが確かめられないのか?

 ……何で俺はこんなにむかついてるんだろうな。あんな遠い世界の連中の事なんて考えずにいれば楽しく過ごせるだろうに。
 でも、考えは止まらない。これが困ったところさ。考えることを、やめられればいいのに。幸せな連中のことなんて、忘れてしまえればいいのに。そうすれば、自分が一番幸せだ。
 全く、人間ってやつは、不便だな。なんでこんな風に苦しまなきゃいけない?なんでこんな風に悲しまなくちゃいけない?なんでこんな風に…… こんな感情なんて、元からなければ、よかったのに。
作品名:擦り切れ 作家名:うろ