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Life and Death

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「それもそうですね……お姉ちゃんの裸を知らない人に見られるなんて……もえます……」
 この妹ダメだ。なんかもう色々ダメだ。
「お前ら、流石に引くぞ」
 レズで近親相姦は大抵の人間が受け付けないだろう。
「むぅ、エロ漫画界じゃ結構ノーマルなのに。双子百合シチュなんて」
 余談ではあるが、この姉妹は二人でエロ漫画家として生計を立てている。ペンネームはぼんれすはむ。姉の方が作画担当で『ぼんれ』、妹の方がシチュエーションとシナリオと後は姉の餌付け担当で『すはむ』。エロ漫画界のゆで○まごを自称しているが、ゆで○まご先生にとってこれほどイメージダウンな話もない。
「ところで、既に死んでいるから死ねないとか、死という状態がないから死ねないとか、イマイチ『ピン』と来ないんだが。どう理屈を捏ねようと、殺せば死ぬだろ」
 その辺は姉妹らも思っていたことだ。だが、そういうものなのだから仕方ない。
 魔女の言葉をそのまま引用するならば――。
「「――生物の生死とは状態の変移であり、二面性である。生物は生と死という二つの概念を持って、初めて死ぬことができる。生が終わることで死を受け入れる準備ができて、死という状態を迎えることで生を終わらせることができる。だから、死が欠けたり増えたりでもしたら、人は簡単にアンデッドにもイモータルにもなる――」」
 ――とのことである。
 人から死を剥奪して他の人間に与える方法が分からないからこうして姉妹らも背広の男もヤキモキしているわけである。
 そんな話をしている間に、縄から手が抜ける。
 よし、これで後は男が後ろを向いた時にこの石頭で――。
 ……ん? なんで妹の縄が解けているんだ? 妹は男の隙を盗んでそっと後ろに立つと――。
「くぃ……」
 っと首に縄を掛けて、一気に捻り上げた。男の背丈もそれほどではなかったので、縄を掛けるのもそれほど苦ではなかった。
「殺したの?」
「多分死んでない。必殺、首絞め気絶ごっこです……」
 ――必殺だったら死んでるだろう。
「……どうやって、縄を?」
 妹は手を挙げると。すると、ダクダクと手首から血が流れていた。
「縄で腕をこすって、血を出して、縄が外れやすくしました……」
「そ、そんなことっ!」
 いや、顎を吹き飛ばされた自分が言うことでもないが。
 でも、血がなくなるのは不味い。死ぬことはないが、貧血や失血症には掛かるのだ。姉は自身のワンピースを裂くと、妹の傷に宛がう。
 無論、先ほど大量に失血した姉もふらふらしつつあるが、そのことを忘れてしまう程に慌てていた。
「それより、早く逃げましょう……」
 そう言って、妹は緩みそうな頬を引き締めながら、その倉庫の戸を開ける。
「そうだけど、ちょっとまって……はい、できた」
 しばらく走り回り、タクシーを捕まえて新居に最も近い駅までと頼む。赤く染まってしまった姉のワンピースを見て、タクシーの運ちゃんはぎょっとした目をしたが、姉が「ちょっと鼻血を出してしまって」というと、安心した顔を見せた。
「せっかくの転居初日なのに、散々な目にあった」
「新居の方は、人には知られてないので少しは過ごしやすくなるでしょうね……」
 そう言って、二人はタクシーの中で息を吐いた。

 姉妹は大家から貰った鍵で、その部屋の戸を開く。
 部屋番号は二〇四番。
「私達にはお似合いの番号だね」
「そうですね……忌み数の四番は、死の番号。なのに、私たちにはその死が存在しない……面白い偶然もあったもんです」
 そうだろうか。あの大家、ワザとこの番号を宛がったような気がするのだが……。なんせあの大家、別れ際に「本当に、面白い方々……」とか呟いていたような気がした。妹は平気な顔をしていたが、姉は少し不気味に思った。
 姉はその違和感を振り払い、部屋の中に荷物を積み込む。
 荷物もそれほど多くはなかったので、荷解きはすぐ終わってしまう。
「えーっと、確か挨拶は両サイドと下の階だよね」
「あと、下の階の両サイドにも一応して置いた方がいいです……」
 両サイドの二〇三番と二〇五番には誰もいなかった。留守なのか、それとも空室のなのか、判断は付かなかった。後は、真下の一〇四番と、その隣の一〇三番と一〇五番だろうか。
「それにしても、作家にとっては憧れる部屋ですね……」
 確かに、風呂なしトイレ共有、畳敷きの築二十年越えの木造アパートなんて、もう文学の世界だ。姉は、このようなアパートメントはもう重要文化財として保護すべきだと思わないでもなかった。
「とりあえず下の階に挨拶だねっ。音も結構響くみたいだし、迷惑掛けちゃうからね☆」
「お姉ちゃん、引越し蕎麦がありません。うどんならありますが……」
「それじゃあ、うどんでもいいんじゃない? どっちも長いし」
 だが細くはない。ごん太うどんを片手に、下の階に向かう。
「「すみませーん、最近越してきて伊皆と申しますっ!」」
 うどんを片手に、姉妹はその戸の前で声を上げる。

作品名:Life and Death 作家名:最中の中