2006-2010 詩集Ⅱ『そら』
幻想の章
1.
グラスに残る昨夜の月
弧を描く半透明の軌跡
濁った気配を香水で掻き消して
窓ガラスに映った亡骸を拾って
夕焼けが切ないと誰が決めただろう
貴方が振り向かない私を笑いながら
長い長い 漆黒の帳に身を委ねる
アンバーグロウ
琥珀色の雨に酔いしれては
鍵盤の上へと指を滑らせた
賑やかなシャンデリア
華やかなシャンパーニュ
僅かに燻る紫煙の匂い
Shuffle the cards.
Bet only in my bed.
（次々切られていくカード
「駆け引きはベッドだけにして」）
強がるとまた貴方は笑う
いつしかその口元に憧れて
私の背伸びを許してくれる
狡猾さ 気付かない振りで懐いた
いずれ来る夜明けに怯えながら
ダークグレーの陰から覗く瞳
耳を素通りする喧騒の中に
反響して堕ちる一時の宝石
声も呼吸も足音さえ見つからない
『July 31, 2009 -- Incanto』
作品名：2006-2010 詩集Ⅱ『そら』 作家名：篠宮あさと