2006-2010 詩集Ⅰ『あさ』
23.
夏のある日
強い日差しの下をあなたは去って
追いつくのが遅かった私は
静かに、大地に伸びる影を見た
遠くで木霊する旋律が
すぐ耳元までやってきて
心地よさと涙に包まれて目を閉じる
それから、幾星霜
本当は刹那かもしれないけれど
長いようで短い夜のあとに
あなたの微笑む顔が見えた
風のざわめきは近く
大切だった箱庭は宝石箱に
あの頃泣いていた子供は もういない
あかつきの闇
薄れていったのは星空
新しい時間がやってきて
残った月がやわらかに揺れている
『January 19, 2010 -- 祝福』
作品名:2006-2010 詩集Ⅰ『あさ』 作家名:篠宮あさと